先日、7月24日の「自在コラム」で、中国の北京テレビが放送した、段ボール紙を混ぜた肉まん販売の報道は「やらせ」だったと中国当局が発表したものの、その続報が出てこないので、ひょっとしたらその発表報道に何か裏があるのでないか、と書いた。今回も中国の話である。
中国から「カシミヤ100%」の表示で輸入されたセーターやマフラーに別の動物の毛が混じっていたとして85万点が回収された。「綿羊絨(めんようじゅう)」と呼ばれる羊の一種やヤクの毛などが、中国での製造過程で混入されたらしい。製造工程における中国製品のうさんくささがまたもや露呈した話だが、果たして責任は中国だけにあるのか、と言いたい。アパレルのプロだったら、カシミヤの手触りでだいたい真贋の判別はつくはずだ。混入を承知で販売し、利益を上げていたとしたら、日本企業の方が問題ではないのか。
週刊誌やテレビの連日の報道に触れていると、そのうち中国産の製品は店頭からすべて追放されるのではないかと思うくらいだ。そうなると、今度は「国内産」と偽装した「中国産」が売られる可能性がある。本当に怖いのはその点だ。
中国製品の話ではないが、先日、大学の研究員から聞いた話である。北朝鮮と国境を接するある中国の山中に日本側の大学が観測機器を複数設置することになった。データは日中の大学で共有することとし、中国の大学に協力を求めた。ところが、中国側は観測機の見回り料金を月ごとに払えと主張してきた。データこそ価値があるのだが、中国側の目当ては研究もさることながら金だったのである。その話を聞いて、そのうち観測機器そのものが一つ減り、二つ減りしていくのではないかと邪推した。
一連のニュースなどを見て、製品の完成度や顧客満足度など日本の価値観とは相容れない。この春、北京でディズニーランドそっくりの遊園地が出現したことが報道された。日本側の取材者が「これはミッキーマウスではないのか」とインタビューすると、遊園地の関係者は「いやこれは大きな猫である」と強弁して見せた。著作権違反というニュースの切り口だったが、一つの遊園地の次元を超えて、中国経済に潜む壮大なフィクションを感じさせた。
アメリカの映画「ニュースの天才」では、若干24歳のスティーブン・グラス(ヘイデン・クリステンセン)が政財界のゴシップなど数々のスクープをものにし、スター記者へとのし上がっていく。彼の態度は謙虚で控えめ、そして上司や同僚への気配りを忘れない人柄から、編集部での信頼も厚かった。しかし、すべてがフィクションで構成された記事だった。中国の経済成長もすさまじい勢いだ。が、その綻(ほころ)びが出始めているのではないか。フィクションは一筋の綻びが延々と連なる。
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