最近、友人たちとの会話でこんなフレーズを使う。「最近、7対3の割合で7番より3番」「3度の飯より3番かもしれない」。そのややこしい表現は一体なに・・・。
ベートーベンのシンフォニーのこと。ICレコーダーで3番と7番を録音していて、それを通勤のバスの中や、職場での休み時間に聴いている。最初は7番が圧倒的に多かった。ところが最近は3番なのである。7対3の割で3番を聴く聞く回数が多い。休日など一日中、3番を聴いていることがあるので「3度の飯より」と表現したりする。
自分には音楽理論や感性、絶対音感などという「クラシック力」は持ち合わせていない。ただ、脳に心地よさそうだからという理由だけで聴いている。7番はテレビドラマ「のだめカンタービレ」でこれまでクラシックと無縁だった若者の間でも有名になった曲。そして3番はベートーベンがナポレオンを賞賛して作曲したが、皇帝になったのを激怒して題名を変えたというエピソードがある「エロイカ(英雄)」。
ではなぜ7番より3番かというと、おそらく季節と関係している。7番は出だしが少々重い。梅雨の時期、憂うつだった。それに比べ3番は第1楽章の出だしは風のように爽快だ。そして3番は7番より熱くならない。要は、夏向きなのである。
演奏は、岩城宏之さん(故人)が2005年12月31日に東京芸術劇場で指揮した、1番から9番までの生番組(CS放送「スカイ・A」)を私的にダビングしたものだ。当時、私は演奏をインターネットでライブ配信するイベントにかかわっていたので、東京芸術劇場の片隅で岩城さんの指揮をじっと見守っていた。その様子は「自在コラム」で何度か紹介した。
NHK交響楽団のメンバーを中心に、オーケスオトラ・アンサンブル金沢の団員も加わった、おそらくその時点でもっとも意識とレベルの高い演奏家たちで構成された「岩城オーケストラ」だった。なにしろ、弦と打楽器の奏者などは岩城さんと「運命」をともにして、1番から9番の連続演奏に挑戦してみようという、意識とテンションの高い奏者が集まった。だから東京芸術劇場のホールは当時、指揮者も演奏者も聴衆もある種の緊張であふれていた。こんなベートーベン演奏は世界でもそうない。
飽きずに毎日聴くことができるのは、その緊張感をいまでも共有しているからかもしれない。
⇒8日(水)朝・金沢の天気 はれ