自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆割込企画「北海道異聞」上

2007年08月19日 | ⇒トピック往来

 「デープな能登」をシリーズで連載中だが、現在、北海道を旅行中なので、割り込み企画として「北海道異聞」を始める。これまでの北海道のイメージとはちょっと違う観点でこの北の大地を見つめることにする。

      「大らかさ」の死角

  18日に札幌に着いて、さっそくナイトクルージングのバスツアーに参加した。サッポロビール園=写真=でジンギスカン料理を賞味する。2杯目のビールを注文し、ある「事件」を思い出した。当日タンクに残ったビールを、翌日客に出すタンクに継ぎ足して使っていたという問題だった。飲み放題の客にこの継ぎ足しビールを出したが、単品の客には出さなかったという。タンクからタンクの継ぎ足しだったので衛生上は問題はなかったろうと推測するが、北海道観光のキャッチフレーズである「試される大地」に水を差す問題として注目されたのを思い出した。もう5年ほど前のことである。ともあれ、肉も野菜もお代わりをさせてもらい、満足度も高かった。

  ちなみにこの「試される大地」のキャッチフレーズは「自然一流、食事二流、サービス三流」といわれる北海道観光を立て直すという意味合いがあるそうだ。

  藻岩山のロープウエイへ向かう途中、バスガイド嬢が面白いことを話していた。「白い恋人」で知られる知られる菓子メーカー「石屋製菓」が賞味期限を延ばして記載した問題や、商品から大腸菌群や黄色ブドウ球菌が検出された問題についてである。「ミートホープ(苫小牧市)の牛肉ミンチの品質表示偽装事件のときは北海道の人もバカしていると怒ったものです。でも、石屋さんの場合は北海道の銘菓のシンボルのような存在ですので、社長さんも交代したことだし、頑張って立て直してほしいと願っているのです」と。続けて「みなさんもこれに懲りずに召し上がってください」と頭を下げたのである。

  遠方に住む我々にとっては、全国的に知られた銘菓とはいえ、罰を受けて出直せばよいのに淡々と考えている。しかし、北海道の人たちにとっては、よほどショックだったのだろうと推察する。2000年に発生した雪印乳業の乳製品による集団食中毒から牛肉偽造事件など一連の事件で、北海道にあった雪印の主力工場が次々と閉鎖され、少なからぬ打撃を受けたはずだ。「白い恋人」ショックはある意味でその再来かもしれない。石屋製菓の社員でもないガイド嬢が頭を下げた心境は理解できるような気もした。素朴な郷土愛からくる仕草とも受け取れた。  藻岩山(531㍍)の山頂から眺める札幌の夜景は絶景だった。ススキノのネオン街がひと際明るく、パノラマのように広がる。ただ、展望台では肌寒く感じた。

  帰りに観光バスは大通り公園を通った。ガイド嬢はいう。「この公園の芝にはロープをはるなどの規制がありません。自由気ままに芝を楽しめます。北海道の大らかさではあります…」。ちょっと違和感があった。芝はその緑を保つために養生が大切である。北海道の大らかさとは関係ない。その時ふと思った。コンプライアンス(法令遵守)を「大らかさ」が超えたらどうなるだろうか。「大らかさ」を企業の経営者がを勘違いしたらミートホープや石屋製菓のようになるのではないだろうか、と。そんなことを思った。

 ⇒19日(日)朝・札幌の天気  はれ

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