自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★今そこにある歴史

2012年09月18日 | ⇒メディア時評

 すさまじい歴史の造られ方である。これが50年後、100年後にどのように評価されるのか。

 「日本製品ボイコット」を叫びながら日系スーパーをことごとく襲い商品を略奪する。「反日無罪」を叫びながら日本の自動車メーカーの車を焼き、日系ディーラーの建物を破壊する。日本料理店を襲う。テレビで見る中国の反日デモは単なる暴徒にしか見えない。おそらく常識ある中国の人々は恥じているに違いない。

 政教分離は日本では当然のごとく受け入れられている。しかし、分離していないのが世界の常識だ。「イスラム教の預言者を冒涜(ぼうとく)した」とされるアメリカ映画をきっかけに、反米デモが止まらない。リビアでは、駐アメリカ大使が殺害され、中東全域のほか南アジアまでイスラム圏の11の国と地域に一気に加速した。クリントン国務長官が「アメリカ政府は、この映画とは全く関係ない」といくら説明していても、アラブ人たちが振り上げた拳は「反米」の表現を取らざるを得ない。宗教対立と化している。アメリカとしては表現や言論の自由を制限することはできない、ましてイスラム圏に武力攻撃を仕掛けることもできない、事態の沈静化を待つしかない。

 テレビや新聞などのメディアで連日取りあげられていること、それは「今そこにある歴史」だ。きょうも中国の浙江省と福建省から多数の漁船が東シナ海に向け出航し、漁船団は尖閣諸島周辺海域に展開する見通しだという。中国の新聞は「1000隻の漁船が釣魚島(尖閣諸島)に向かう」と「予言」している。この1000隻もの漁船は魚を取らずに尖閣諸島に上陸して気勢を上げるのだろうか。

 この大量の漁船に動員をかけ、メディアで煽り、そして国際世論をつくる。「中国人はこんなに、日本政府による釣魚島の国有化を怒っている」と。この演出力や、ボルテージの上げ方は日本人には到底、真似できないだろう。こうした混沌とした中で歴史は日々造られる。中国では「(国有化による)日本政府の挑発に対し、党も国民も一致して毅然と反撃に出た」という表現で語られているのであろうか。日本人は違和感を覚えるが、激しい嫌悪感を感じる人も少なくないだろう。あるいは面白くなってきたと思う人もいるだろう。この騒乱状態がいつま続くのか、どこまで広がるのか、想像がつかない。

 ただ、歴史の目撃者である我々には、「主張の真実」はどこにあるのか、それが見えない。日本政府が尖閣諸島の領有をめぐり中国政府を論破したという話は聞いたことがないからだ。互いが言い合っているから、すっきりとせず近未来の解決策が見えにくい。論争でカタをつけろ、と言いた。

⇒18日(火)夜・金沢の天気  あめ

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