自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆皇室は国内最後の養蚕家になるのか

2021年06月26日 | ⇒ニュース走査

   前回のブログの続き。「人呼んで上滑り長官」ではないのか。報道によると、宮内庁の西村長官は、24日の定例の記者会見で、「オリンピックをめぐる情勢につきまして、天皇陛下は現下の新型コロナウイルス感染症の感染状況を、大変ご心配されておられます」と述べた。そのうえで、「国民の間で不安の声があるなかで、ご自身が名誉総裁をおつとめになるオリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大につながらないかご懸念されている、ご心配であると拝察をいたします」と話した(6月24日付・NHKニュースWeb版)。

   これについて菅総理は、官邸で記者団に対し「長官ご本人の見解を述べたと理解をしている」と話した(6月25日付・同)。西村長官が陛下の気持ちを案じて述べたコメントなのか、あるいは長官本人の見解なのか、正直どちらでもよい。陛下がオリンピック・パラリンピックを案じられる気持ちは、国民も理解できる。それもさることながら、長官がもう一つコメントすべきは、皇室の威厳にかかわる問題として浮上している、眞子さまの婚約内定問題についてだろう。長官は陛下の今のお気持ちをなぜ述べなかったのか。

   オリ・パラより難題で、宮内庁長官といえどもコメントできないのは理解できる。皇室がお二人の結婚に反対していると発言すれば、国際世論が沸騰する。相思相愛のお二人の結婚を許さない日本の皇室は前近代的だ、旧態依然とした日本の姿をさらす出来事だ、と。問題は婚約内定中の小室圭氏側にあったとしても、この批判は日本にとって不名誉なことになる。逆に、結婚を認めれば国民の皇室への求心力がガタ落ちすることは想像に難くない。

   冒頭の「人呼んで上滑り長官」は、4月8日に小室氏が母親の金銭トラブルに関して説明した28㌻文書について、西村氏が同日の記者会見で「非常に丁寧に説明されている印象だ」と述べていたが、その4日後に小室氏側が解決金を渡す意向があると方針転換したことで、長官発言は軽々しいとSNSなどで批判されたことを指す。

   話は変わるが、宮内庁の公式ホームページをチェックしていて、「給桑(きゅうそう)」という言葉が目に留まった。蚕(かいこ)に桑(くわ)を与えること。大きく育った蚕に、枝付きの桑を与えることを「条桑育(じょうそういく)」と説明している。5月25日に皇后が皇居内の紅葉山御養蚕所で給桑をほどこされる様子を掲載している=写真=。この画像を見て、皇室は相当長い歴史と技術を有する養蚕家でもあるのだと気付かされた。

   日本文化のシンボルの一つは和装、その素材は絹織物だ。蚕が産み出す繭(まゆ)から生糸をつくり、生糸を繊維に加工して絹織物をつくる。ところが、農水省の公式ホームページに掲載されている「新蚕業プロジェクト」によると、平成元年度(1989)に養蚕農家は全国で5万7230戸だったが、同30年度には293戸と激減している。さらに、養蚕農家の主たる従事者は現在も70歳以上が6割を占める。絶滅が危惧される業種なのだ。世界では中国が圧倒的なシェアを占め、インド、ウズベキスタンと続く(JETRO公式ホームページ「ビジネス短信」)。ひょっとして、10年後、20年後には皇室が国内最後の養蚕家になるのか。

⇒26日(土)夜・金沢の天気      くもり時々あめ

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