自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★ヒートドーム化する五輪開催 批判の矛先はテレビ局に

2021年06月29日 | ⇒メディア時評

   きのうのブログで香港の大雨警報、「ブラック・レインストーム」について記した。そしてきょう未明、発達した積乱雲が帯状に連なり集中的な豪雨をもたらす「線状降水帯」が沖縄で発生し、午前3時までの3時間におよそ160㍉の雨が降った。気象庁は沖縄本島地方に「顕著な大雨に関する情報」を発表した(6月29日付・NHKニュースWeb版)。そして太平洋を超えたアメリカとカナダでは強烈な暑さが襲っている。

   アメリカとカナダの西部で記録的な熱波が続いていて、カナダ・ブリティッシュコロンビア州リットンで28日、47.5度を観測した。地元メディアなどが報じた。前日に46.6度を記録し、84年前の最高記録を破ったばかりだった。上空の高気圧が熱い空気を閉じ込める「ヒートドーム(heat dome)」現象が原因とみられる。 アメリアとカナダの両国政府は「危険」な高い気温が今週中は続く恐れがあると、市民に警告した(6月29日付・BBCニュースWeb版日本語)。

   「ヒートドーム」現象という言葉は初めてだ。厳密には気象用語ではないものの、停滞する高気圧が、加熱中の鍋の「ふた」のように機能する。高気圧が晴天と高気温をもたらし、高気圧が長期間続けば続くほど、熱波も続き、気温は日に日に上昇を続けるという。 現在、北アメリカ大陸にかかる高圧帯はカリフォルニア州からカナダの北極圏、内陸のアイダホ州まで広大な範囲を覆っている(同)。

          話は変わるが、新型コロナウイルスのパンデミック下でオリンピック開催を疑問視する国際世論が「ヒートドーム」現象のように熱くなっている。歯に衣着せぬ論評でも知られるアメリカのエンターテインメント週刊誌「ザ・ハリウッド・リポーター」は6月23日号で、「NBC Approaches “Moral Hazard” Amid Tokyo Olympics Push During Pandemic」の見出しで、アメリカの3大ネットワークの一つで、全米のオリンピックの放送権を独占していてるNBCは、東京オリンピック開催で「モラル・ハザード(倫理観の欠如)」のレベルに近づいていると痛烈に批評している=写真=。

   IOCが簡単に五輪を中止しない理由は、IOCの収入は放送権料が73%、スポンサー料が18%だ。その放送権料の50%以上をNBCが払っている。韓国・平昌冬季大会(2018年)と東京大会の合算した数字だが、NBCの供出額は21億9000万㌦だ。ちなみに、開催国の日本はNHKと民放がコンソ-シアムを組んで5億9400万㌦を払っている。

   ザ・ハリウッド・リポーターが「モラルハザード」の論拠として上げているのは、今月14日に金融機関主催の投資家会議でNBCの最高経営責任者(CEO)が、「the pandemic-tainted Tokyo Games “could be our most profitable Olympics in the history of the company.“」(パンデミック下での東京大会は「当社の歴史の中で最も収益性の高いオリンピックになるかもしれない」)と述べたことだ。開催されれば発生するコロナ禍が日本人に最も大きな打撃を与える可能性があるにもかかわらず、その利益をCEOが誇示するのは「命より金」を重視するモラルハザードではないか、と。さらに、CEOが「And then once the Opening Ceremony happens, everybody forgets all that and enjoys the 17 days.」(開会式が行われると誰もがすべて忘れて17日間を楽しむ)と発言したことも批判している。

   CEOの不注意な発言だろう。しかし、オリンピック開催を疑問視する国際世論が、IOCに対してだけでなく放送局にまで「モラルハザードだ」と批判が高まるのはレアケースだ。まさに、「ヒートドーム」現象のように沸騰し、いつ何が起きるか分からない現象が起きている。開催まであと24日だ。

⇒29日(火)夜・金沢の天気      くもり

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