自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「鬼城」の次はデフォルト きしむ中国の成長モデル

2023年08月20日 | ⇒メディア時評

   最近テレビでニュースを視ていて、「鬼城」という言葉がキーワードになっている。中国の不動産危機が現実になってきて、資金繰りの悪化で開発が途中でストップした高層住宅群があちらこちらに。クレーンが屋上に残されたままの未完成の高層マンションが立ち並ぶ様子は、まさにゴーストタウンだ。余計な心配かもしれないが、構造物が朽ち果て、あのクレーンが落ちて来ると、さらに無残な姿になるのではないか。  

   2012年8月に中国の浙江省を訪れたときに、中国人の女性ガイドから聞いた話だ。当時、中国は地方でもマンションの建設ラッシュだった。「なぜ地方でこんなにマンションが建っているのか、ニーズはあるのか」とガイド嬢に尋ねた。すると、「日本でも結婚の3高があるように、中国でも女性の結婚条件があります」と。1つにマンション、2つに乗用車、そして3つ目が礼金、だと。中国ではめでたい「8」の数字でそろえるので、1戸88平方㍍のマンションが人気という話だった。(※写真は、浙江省で撮影したマンション群=2012年8月)

   さらにその3高の背景には中国の「一人っ子政策」(2015年に廃止)があった。中国では、男子を尊ぶ価値観があり、性別判定検査で女子とわかったら人工中絶するケースが横行していた。その結果、出生の男子の比率は女子より高くなる。これが、結婚適齢期を迎えると、女性は引く手あまたとなり、3高をもたらす。一方で、男性は「剰男」(売れ残りの男)と称される結婚難が社会問題にもなっている。

   3高に加えて投機マネーが不動産市場に流れ込み、都市を中心にマンション価格が高騰した。高額なマンションを手に入れても、ローン返済が重石となり、生活が破綻するケースも増えた。さらに、売り主の建設代金未払いで工事が進まず、予定の期限を過ぎても一向に引き渡しされないために、住宅ローンの支払いを拒否する購入者も続出しているようだ。そして、経営危機に陥っている中国の不動産大手「恒大グループ」が17日、アメリカ・ニューヨーク州のマンハッタン地区連邦破産裁判所に連邦破産法15条の適用を申請した。

   「鬼城」の次がデフォルト。中国経済の成長モデルだった不動産業界がきしんでいる。これが、中国の金融業界にどう連鎖していくのか。

⇒20日(日)午後・金沢の天気   はれ時々くもり


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