今月15日に河野防衛大臣が地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を撤回すると表明してから10日余りが経った。その理由は最初よく理解できなかったが、ミサイルの「ブースター」と呼ばれる推進補助装置を基地内で落下させる想定だったが、基地の外に落下する可能性もあり、設備に大幅な改修と追加コストが必須となることから撤回に踏み切ったと報道各社が報じている。
イージス・アショアの配備を撤回すると、日本は当面これまで通り、海上のイージス艦と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)による迎撃態勢となる。一方の北朝鮮は、「金正恩委員長が、敵の艦船などの個別目標を精密打撃することが可能な弾道ミサイル開発を指示したと発表していることも踏まえれば、弾道ミサイルによる攻撃の正確性の向上を企図しているとみられる」(令和元年版防衛白書)。つまり海上のイージス艦船などを集中攻撃してくる可能性が高い。破壊された場合、イージス・アショアがなかったらどう防衛するのか。国家安全保障会議(NSC)はこの夏に集中的に討論されるが、見守りたい。
北が弾道ミサイルを撃ち込む標的の一つが能登半島とされる。2017年3月6日、北朝鮮が「スカッドER」と推定された中距離弾道ミサイル弾道ミサイル4発を発射し、そのうちの1発は能登半島から北に200㌔㍍の海上に、3発は秋田県男鹿半島の西方の300-350㌔㍍の海上に、いずれも1000㌔㍍飛行して落下した=写真=。
能登半島の先端・輪島市の高洲山(567㍍)には航空自衛隊輪島分屯基地のレーダーサイトがある。このレーダーサイトには、航空警戒管制レーダーが配備され、日本海上空に侵入してくる航空機や弾道ミサイルを速く遠方でも発見するため24時間常時監視している。日本海は自衛隊の訓練空域でもっとも広く、「G空域」と呼ばれる。そのエリアに、しかも監視レーダーサイトの目と鼻の先の200㌔に北朝鮮はスカッドERを撃ち込んだのだ。
男鹿半島にも加茂分屯基地の警戒管制レーダーが配備されている。北とすれば、この日本の2ポイントのレーダーサイトヘの攻撃は完全に射程距離に入れたとのメッセージを込めたのだろう。北が中距離弾道ミサイルを日本に撃ち込むとすれば、おそらく防衛ラインの「目と耳」であるレーダーサイトだ。ここを叩けば、丸腰同然となる。イージス・アショアの導入が決定したのはこの年の12月だった。
あれから3年、北の弾道ミサイルはさらに高性能化したに違いない。低空飛行や軌道の変更が可能な「戦術誘導兵器」化した新型ミサイルがそれだ。イージス・アショアを白紙に戻したのも、ブースター落下問題というより、防衛戦略の総合的な見直しが急がれるとの判断なのかもしれない。
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