金沢大学が3月4日と5日の2日間にわたって開催した「金沢大学タウン・ミーティングin能登」の分科会のコーディネーターに指名され、奥能登に出かけた。私自身もこの地方の出身であり、何か心が騒ぎ、熱いものを感じた。そして集った人々が面白かった。そこで「自在コラム」は「奥能登へ早春行」と題してシリーズで。
まず、会場の石川県能登町のホテル「のときんぷら」に着いた。これは能登の方言かと思ってしまうが、県の宿泊施設でかつては能登勤労者プラザと呼ばれていた。地元の人たちが愛称でキンプラと呼んでいたので「のときんぷら」をホテル名にした。ハプニングが起きた。会場入り口のタウンミーティングの看板を女性スタッフが見て大声を上げた。「こりゃダメだ。間違っている」
地元の看板業者に発注した看板なのだが、開催期間が「3月4日(土)~3日(日)」となっていたのだ。これでは開催期間が365日になってしまう。急きょ、「3」の文字の上に紙を貼り「5」と修正した。その女性スタッフは「看板代金をきっちりとディスカウントさせます」と怒りが収まらない様子。これが波乱の幕開けだった。
金沢大学のこの催しは「地域に開かれた大学」を合言葉に2002年度から輪島市、加賀市、白山市、珠洲市で開催していて今回で5回目。ことしのテーマは「能登の自然と文化を生かす途(みち)」。初日100人余りの参加があった。なかで、ひときわ声の大きな参加者がいた。安田宏三さん(62)、ニューヨークヤンキースの松井秀喜選手の出身地である能美市の山間地で15年間、炭焼きをしている。
顔見知りだったので、こちらから声をかけた。「安田さん、中国が木炭の輸出を禁止しましたが、国内産の炭の価格が上がって、儲かっているんでしょう」と。すると安田さんは「大手の貿易会社は確かに手を引いたが、日本の個人のバイヤーが中国の役人に鼻薬(はなぐすり)を効かせて地方の港からどんどん密輸しているんだよ。だから我々が期待したほど木炭価格は上がっていない。あの国は法律はつくってもザルやな、ガハハハ」と。
今度は安田さんの方から。「ところで宇野さん。病院の救命道具に木炭が欠かせないって知ってた?」。「えっ、それって何か枕の下に置いて、ぐっすり眠るとかですか…」。「違うよ。救命道具には木炭を粉にしたものがあって、薬物自殺をしようとして運ばれた人に水で溶かして無理やり飲ませて一気に吐かせる。炭は薬物を吸着するから、胃の中を洗うって訳だ。どうだ、炭で命が救えるんだ」とテンションが高い。
会議は午後1時半から5時半ごろまで、大学教授や地域起こしの活動家ら7人が能登の水産資源や森林資源の活用、バイオマス発電などさまざまな角度から話題提供をした。初日の会議が終わり、外を見ると夕日が山並に映えていた。
⇒6日(月)午後・金沢の天気 くもり
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