その発言が何かとニュースになる石川県の谷本知事が5月28日にドラッグストアチェーンの社長と面会した際、「ドラッグストアはわが世の春でしょう」と発言したことが、新型コロナウイルスの感染拡大がまだ治まらないこの時期に不適切と全国ニュースにもなった。知事はその後の記者会見で「適当でなかった。反省している」と述べた。ただ、知事の発言は事実無根ではない。
多くの企業の業績が総崩れといわれる中で、ドラッグストア業界の業績は順調だ。石川県に本社がある東証一部のドラックストアチェーンのA社の株価は新型コロナウイルスに対する政府の緊急事態宣言(4月7日)から2000円余りも上昇している。最近よく目にするようになったのが新規開店のラッシュだ、県内に73店舗を構えるA社のほかに37店舗のG社(本社・福井県)、19店舗のU社(同・東京都)と乱立気味だ。 さらに愛知県に本社を置くS社が今年に入って金沢に3店舗を開設した。2024年2月までに北陸で一気に100店舗を計画している(S社公式ホームページ)。S社は店舗数だけでなく、店舗の多様化を強調している。「クリニック併設型店舗の出店や、地域の在宅医療における訪問調剤サービスなど、北陸エリアの地域医療振興にも貢献してまいります」(同)と。
ドラッグストアチェーンのこうした強気の経営戦略は超高齢化社会を迎えるマーケットの主導権を握る発想かもしれない。S社の戦略通り、高齢化社会のニーズをビジネスに結びつける対応力と多様性がこの業界にはある。ドラッグストアとスーパ-、ドラッグストアと介護・診療施設の併設、あるいはドラッグストアと家族葬を中心とした葬儀場もあるかもしれない。
実際に石川県庁近くの金沢1号店を見学に行ってきた=写真=。立地では石川県立中央病院と近い。店舗の中に、調剤部門と介護の相談を受け付ける介護ステーションを併設している。建物内で内科クリニックも計画しているようだ(同)。何より挑戦的だと感じたのは、A社の店舗と150㍍くらいの距離にあることだった。地域を絞って集中的に出店する戦略で、域内の市場占有率を一気に高めるドミナント展開をS社は狙っているのだろう。
A社とS社の店舗は県庁のすぐ近くにある。このシェア争奪の現場を間近に見て、おそらく知事も実感していたのかもしれない。「ドラッグストア業界はわが世の春、だから争いもし烈になる」と。
⇒28日(日)午後・金沢の天気 くもり時々はれ
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