自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆メディア業界、総選挙もリスク分散か

2020年09月26日 | ⇒メディア時評

   来年に延期された東京オリンピックについて、IOCのバッハ会長が「協力すれば必ず実行でき、歴史的な大会になる」と述べたと、きのう25日のブログでニュースを引用した。すると、このブログを見てくれた知人から「IOCはオリンピックがビジネスなのでそうした発言は当たり前、ニュースでも何でもない」との趣旨のメールが届いた。

   確かにIOCには多額の放映権料が支払われている。2018年の韓国・平昌冬季大会と東京大会の合算額で、日本は5億9400万㌦を払っている。人口1億2600万人として、1人当たり4.7㌦だ。アメリカは21億9000万㌦、1人当たり6.7㌦だ(民放連公式ホームページなど参考)。さらに、アメリカのテレビ局の放送権料は全体シェアの50%以上ともいわれる。アメリカの放送権料が日本より高いのは訳がある。IOCとの金額交渉の仕方が異なるのだ。

   日本の交渉形式はNHKと民放が「ジャパン・コンソーシアム」(JC)というチームを組んでの交渉だ。そして、金額が確定した場合は、NHKが70%、民放が30%で負担することになる。アメリカの場合は民放が強く、3大ネットワークと呼ばれる「世界最大の放送局」のABC、「系列局数ではアメリカ最大」のCBS、そして「アメリカ最古」のNBCが放送権の獲得を目指して、競ってIOCと交渉するので、日本などと比べると割高となる。

   こうして眺めてみると、日本のテレビ業界は「リスク分散型」、アメリカは競争を繰り広げる「ハイリスク、ハイリータン型」といえる。日本の場合はNHKという巨大な公共放送があるという点がアメリカとのテレビ事情を異にしている理由かもしれない。

   以下は伝聞だが、オリンピックだけでなく選挙報道もコンソーシアム化するかもしれない。新型コロナウイルスの感染拡大がCMを激減させている。そしてNHKも持続化給付金の給付決定を受けた事業者への受信料の免除など行っている。経費節減が緊急の課題なっている中で、総選挙が近いかもしれないと政局が持ち上がっている。

   これまで、NHKは「選挙のNHK」と呼ばれるほど、出口調査や開披台調査などを独自で実施し、民放各社とは比べものにならないくらいの速さと正確性で「当選確実」を出してきた。なので、候補者はNHKの当確を確認して初めて万歳をするのが習わしになっているほどだ。そのNHKが、民放や新聞各社に呼びかけ、経費分担して選挙特番の情報を収集するようだ。いわゆる「選挙コンソーシアム」だ。民放や新聞各社にとっても経費節減の折、おそらくこの誘いに乗るだろう。

   リスク分散とは言え、こうなるとどのチャンネルも開票速報は同じ、となる。もちろん、候補者の当確の予想はそれぞれの局の分析なので異なるだろう。ひょっとして総選挙をやってほしくない、と願っているのはメディア業界かもしれない。

⇒26日(土)午後・金沢の天気    あめ


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