自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「心の灯り」能登の祭りがことしも

2021年04月29日 | ⇒ドキュメント回廊

   地域の祭りが盛んな能登でよく使われる言葉がある。「盆や正月に帰らんでいい。祭りには帰っておいで」と。親たちが、ふるさとを離れて都会などで暮らす子どもたちによく言う。能登の祭りは「キリコ」と呼ぶ高さ10㍍ほどの奉灯(ほうとう)や曳山(ひきやま)がにぎやかに練り、地域にとっては年に一度のビッグイベントなのだ。その祭りがことしも開催が危ぶまれている。

   先日、輪島市門前町の「黒島天領祭」の関係者から電話でヒアリングがあった。黒島はかつて北前船船主が集住した街で、貞享元年(1684)に幕府の天領(直轄地)となり、立葵(たちあおい)の紋が贈られたことを祝って始まった祭礼とされる。輪島塗と金箔銀箔で飾った豪華な曳山=写真=が特徴で、毎年8月17、18日に行われる。自身もこれまで祭りに参加する学生たち40人ほどを連れて黒島を訪れている。昨年(2020年)は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため中止となっていた。

    ヒアリングは「ことし祭りを実施したら、学生のみなさんには参加してもらえるでしょうか」との内容だった。祭りの実施をめぐって祭礼実行委員会のメンバーの中で意見が分かれているとのこと。2台の曳山には曳き手や行列などでそれぞれ100人ほどが携わる。まさに「3密」状態となるので、コロナ禍が治まっていない現状ではことしも中止せざるを得ない、との意見。一方、これまで祭りの歴史にはさまざま困難はあったものの継続してきたので、規模を縮小してでも実施すべきとの意見に分かれている。

   ヒアリングでの問いにはこう答えた。「大学の講義でもオンラインと対面の授業に分かれている。この状況では学生たちも前向きに祭りに参加しようというモチベーションにはなれない」と。「ワクチン接種が行き届くまで待ちましょう」と付け加えた。黒島天領祭の実施の結論はまだ出ていないが、中止派が多数と聞いた。地域の人にとって祭りは「心の灯り」のようなものだ。その灯りを絶やしたくないという想いは双方同じだろう。

   能登を代表する祭りとして知られる七尾市「青柏祭」(5月3-5日)のメイン行事は高さ12㍍の山車「でか山」3基が街を練るが、昨年に続きことしも山車の運行は中止となった。そして、きょうの紙面では「金沢百万石まつり」(6月4-6日)がことしも中止の方向で検討されているようだ(4月29日付・北國新聞)。石川県の発表によると、きょう新たに新型コロナウイルス感染者39人を確認した。1日の感染者数としては過去最多となった。また、能登半島の尖端に位置する珠洲市で初めて陽性が確認され、県内の全市町で感染者が出たことになる。祭りの季節を前にコロナ禍がことしも立ち塞がる。

⇒29日(木)夜・金沢の天気      くもり時々あめ


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