自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆中国との未来関係

2010年10月31日 | ⇒トピック往来
 先日、医学部の教授と話してして、「新型うつ病」という言葉を初めて聞いた。かつてのうつ病は攻撃が内側に向かうことが多く、自分を責めるというカタチで現れたが、最近の新型うつ病は攻撃が外に向かっているのが特徴という。若い人たちに多いらしい。たとえば、「オレがこうなったのはアイツのせいだ」と執拗に攻撃するのだという。性格障害とも言うらしい。

  その話を聞いて、こんなニュースが気になった。東南アジア諸国連合(ASEAN)会議出席のためにベトナムを訪問した菅直人・温家宝首相の会談を中国側が拒否したことについて、中国側外交部が「日本側はASEANの会議期間中に、中国の主権の領土の完備性を侵犯する発言を、メディアを通じてまき散らし、両国の首脳が意思疎通をする雰囲気をぶち壊した。その結果は日本側がすべて責任を負わねばならない」と述べたという。

 また、関連して、「日本側はASEANの会議期間中、メディアを通じて、中国の主権を侵犯する発言を、まき散らしつづけた。日本の外交責任者は、釣魚島(尖閣諸島)の問題をあおりたてた」、さらに「両国首脳がハノイで会談する雰囲気をぶち壊した。その結果、発生した責任は日本側にある」と中国側が主張したという。この言葉を聞いて、冒頭の性格障害をイメージした。アイツが悪いと断言しているのである。これは国としての外交的な言葉なのだろうか。

 おそらく、日本人にとって一連のメディア報道で、中国は「傍若無人」という思いを印象づけたと思う。このままで日本と中国との経済、外交分野での「未来関係」は成立するのだろうか、といぶかる人も多いのではないだろうか。

 「中華思想」という言葉を思い出す。いまの中国の外交姿勢は昔と変わらないのはないか。かつて、福沢諭吉が「脱亜論」を唱えた。専制的なアジアの政治制度に限界を感じて見限った。彼は言った。「悪友を親しむ者は、共に悪名を免かる可らず。我れは心に於いて亜細亜東方の悪友を謝絶するものなり」(鈴木隆敏著『新聞人福澤諭吉に学ぶ』)。当時の日本は民主国家ではなかったが、それでも中国などアジアの近隣国の政治体制は古臭く、嫌気を感じたのだろう。中華思想の悪臭を、現代の日本人も感じ始めている。

 日本のメディアの論調は、すでに中国との関係性を見切っているようにも思える。ベトナム政府が予定している原子力発電所建設計画について、日本が「協力パートナー」とすることで合意し、日本の受注が事実上決まったと大々的に報じた。日本が新興国で原発建設を受注するのは初めて。さらに、省エネ家電などの部品に不可欠なレアアース(希土類)についても共同開発で合意した。経済面の記事として、「中国依存」から脱却を図る論調がこれからも頻繁になっていくのでははないだろうか。

 だからかと言って、癖の強い隣人との関係を絶つわけにはいかない。今後のどうつきあえばよいのか、ある意味で本当の外交がこれから始まる。

⇒31日(日)夜・金沢の天気  あめ

 

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