自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★ロシアという隣人

2010年11月01日 | ⇒トピック往来
 もう25年ほど前の話だ。新聞記者の時代に輪島の海女さんたちを取材した。当時、73歳の海女から「樺太へ行ったとも。しょっぱい川を2つ越えてな」と、戦前、夏場の樺太(サハリン)に出稼ぎに行った話を聞いた。「しょっぱい川」とは、津軽海峡と宗谷海峡のこと。稚内の港から樺太に渡って、ウニ漁をした。樺太に着いて、さらに漁場である本斗(ネベリスク)の岩場を眺めて、驚いたことが2つあったと身振り手振りで思い出を語った姿が今でも忘れられない。突堤のような岩場に岩ノリがびっしりとついていたこと、そして、アザラシが何百頭といたことだった。いかに気丈な海女さんでもアザラシの海に潜るのには、少々腰が引けたのだろう。でも、コンブの林をかき分けると、そこにはウニがぞろぞろいて、まさに豊穣の海だった。

 その豊穣の海は、その後に争いの海となる。1945年(昭和20年)8月11日にソビエト連邦軍が侵攻し、樺太の戦いが勃発し全島が制圧された。8月14日午後11時に日本がポツダム宣言の受諾を連合国に通達した。降伏の意図を明確に表明したあとにソ連軍が北方四島に侵攻し、8月28日から9月5日にかけて、択捉、国後、色丹島、歯舞群島を占領した。日本人の島民を強制的に追い出し、さらには北方四島を一方的にソ連領に編入した。

 ロシアのメドベージェフ大統領はきょう(1日)、北方領土の国後島を訪問するため、極東サハリン州を経由して、現地に到着した。旧ソ連時代を含め、ロシア国家元首による訪問は初めてだ。日本のメディアは、学校や幼稚園、病院、アパートなどを視察すると見られると伝えているが、その狙いは明らかだ。民主党が政権を奪取する以前の去年5月12日に当時の小沢一郎代表は、ロシアのプーチン首相と東京都内で会談し、両国が友好関係を深めながら北方領土問題を解決するアプローチを取るべきだという認識で一致し、日露協力について意見交換している。

 ところが、メドベージェフ大統領はことし9月末に中国を訪問し、胡錦濤国家主席との会談で領有権に関する対日強硬姿勢を互いに確認したとメディアは伝えている。メドベージェフ大統領にすれば、プーチン首相とは外交のスタンスが違うとばかりに日本を刺激してくる。おそらく、今月中旬、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席のため訪日する予定だが、その前後にも北方領土を訪問するとの観測が出ているとメディアは報じている。

 「火事場ドロボウ」のように北方四島を奪取した信頼感がない国が、今度は何をしでかすか分からないと、その歴史を知らない若者たちも感じ始めている。かつて、日本人は中国人とロシア人を口汚くののしった。いまでもそう言っている人たちがいるが、それはそれなりに理由があるのだ。歴史は繰り返す、時代は経れども国民性は変わらない。変わったのは日本人だけかもしれない。隣人ロシアとの付き合い方が難しくなってきている。

⇒1日(月)朝・金沢の天気  あめ

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