これまで隣の国のニュースをチェックしていて違和感があった。韓国政府はいわゆる元徴用工訴訟で、2018年10月に韓国最高裁が日本企業に賠償を命じる判決を出して以降、当時の文在寅大統領が「三権分立」を言い始め、司法の判断を尊重すると言い続けてきた。三権分立は司法、行政、立法の3権で相互に抑制を効かせ、権力の集中を防ぐことで国民の自由と権利を確保する民主主義のシステムだ。決して政治的に利用するものではない。その韓国政府が今の尹錫悦大統領になって、ようやく本来の三権分立の姿に戻ってきたようだ。
NHKニュースWeb版によると、韓国の朴振外相はきょう6日午前11時半からの記者会見で、元徴用工訴訟をめぐる問題で韓国政府がまとめた解決策を発表した。それによると、韓国最高裁の判決で賠償を命じられた日本企業に代わって、韓国政府の傘下にある既存の「日帝強制動員被害者支援財団」が原告への支払いを行う。財源は「民間の自発的な貢献などを通じて準備する」としていて、韓国企業などの寄付で賄う見通し。
朴外相は、原告の高齢化に加えて、判決の確定後、日本政府による輸出管理の厳格化や、日本との軍事情報包括保護協定=GSOMIAなどをめぐって対立が深まったことを踏まえ、「冷え込んだ韓国と日本の関係は事実上放置されてきた。今後は両国の関係を未来志向的により高いレベルに発展させていきたい」と強調した(同)。
朝鮮戦争(1950-53年)で壊滅的な打撃をうけた韓国が、1965年の日韓請求権・経済協力協定で、互いに未払いの賃金など個人の財産・請求権問題について「完全かつ最終的に解決された」(第2条)と確認し、日本は5億㌦(無償3億㌦、借款2億㌦)の供与を行った。無償分だけでも当時の韓国の国家予算に匹敵する巨額の支援であり、その後「漢江の奇跡」と呼ばれた韓国経済の成長を支えることになる。ところが、元徴用工らは当時の日本の経済協力は少なかったなどと主張して、協定で元徴用工の請求権は解決されていないと訴え、冒頭の韓国最高裁の判決となった。それを韓国政府は三権分立の理念と称して、司法判断を尊重するという流れになっていく。
国家と国家の約束を反故にして司法判断を尊重するのであれば、外交も国際条約も必要ない。この際、尹大統領は最高裁の司法判断は国際法上、誤りだったと表明すべきではないだろうか。韓国政府が未来志向で日本の信頼を得るには、賠償の肩代わりだけでなく、そのくらいのことをすべきだ。日本と韓国の有り様が「ちゃぶ台返し」とまで言われほど、信頼関係が失墜している。
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