朝の工房オープン前に、建物の周囲の清掃をします。
すると必ずタバコの吸い殻というのは落ちているもので。
ケントだったりセーラムだったりマイルドセブンだったりするので、落とし主はひとりではありますまい。
ぼくはそれを毎日ひろいます。
ぼくはタバコくんに語りかけます。
「きみはそのけむりでもって、ご主人様のささくれた心をやさしくほどいてあげたのだね」
だけどタバコくんのしょんぼりぐあいときたら、痛ましくてしかたがありません。
さらにぼくはタバコくんのご主人様にも語りかけます。
「あなたのために身を削りながら法外に投げ出されたタバコくんは、ぼくがひろって処分しておきましたよ」
そんな頃ご主人様はきっと、新たに心をささくれさせてまたどこか別の場所にタバコくんを放り投げているに違いありません。
心がささくれるからそういうことをしてしまうのか、そもそも人間性に問題があるから心がささくれ立ってタバコくんの力を借りているのかはわかりませんが、とにかく彼が緩慢に自殺しようとしていることには間違いがないので、ぼくは彼に哀れみを覚えます。
そして彼は、彼の心を助けたタバコくんがひとの手にひろわれようなどとはついぞ考えようともしない人間性のひとなので、ぼくはそのイマジネーションのなさに絶望したくなるのです。
かわいそうな彼よ。
せめて彼が、こんな文章を読んだときに心に痛みを覚えてくれますように。
すると必ずタバコの吸い殻というのは落ちているもので。
ケントだったりセーラムだったりマイルドセブンだったりするので、落とし主はひとりではありますまい。
ぼくはそれを毎日ひろいます。
ぼくはタバコくんに語りかけます。
「きみはそのけむりでもって、ご主人様のささくれた心をやさしくほどいてあげたのだね」
だけどタバコくんのしょんぼりぐあいときたら、痛ましくてしかたがありません。
さらにぼくはタバコくんのご主人様にも語りかけます。
「あなたのために身を削りながら法外に投げ出されたタバコくんは、ぼくがひろって処分しておきましたよ」
そんな頃ご主人様はきっと、新たに心をささくれさせてまたどこか別の場所にタバコくんを放り投げているに違いありません。
心がささくれるからそういうことをしてしまうのか、そもそも人間性に問題があるから心がささくれ立ってタバコくんの力を借りているのかはわかりませんが、とにかく彼が緩慢に自殺しようとしていることには間違いがないので、ぼくは彼に哀れみを覚えます。
そして彼は、彼の心を助けたタバコくんがひとの手にひろわれようなどとはついぞ考えようともしない人間性のひとなので、ぼくはそのイマジネーションのなさに絶望したくなるのです。
かわいそうな彼よ。
せめて彼が、こんな文章を読んだときに心に痛みを覚えてくれますように。