以前、2世帯住宅に改築し、両親が一階に住んでいた。
父が、土地を借りて、持ち家にすんでいたところを、
土地を買ってくれないかと持ちかけられ、
3人の子どものうちの2人が、共同名義人になって土地を購入。
その後、二世帯住宅をローンで作り、家の名義に父も入れた。
初め、母や逝き、父も逝った。
生前、「遺産はお前たちにあげる。長男には仏壇と100万円を次男は、独立しているから
遺産はなしに」と言っていたが、結局、遺言書はなかった。
メモに、「葬式無用」というのがあっただけだった。
残された遺族で、そのあと何回も話し合いがもたれた。
「建物を解体、土地を売って、財産わけする。
ついては、葬式費用は、生前贈与をもらったお前が、負担せよ。」ということになった。
預金も、父が亡くなったときの、室内の片づけに70万かかり、父のなくなる前の一時期の入院費用、
日々の経費など立て替えたままの金額などは、すべて戻らず、無一文状態だったために、引っ越し費用、借家の契約費用などの金を利息付で借りた。
家の解体150万。
銀行へのローン返済およそ600万。
家の片づけ、不用品の回収などにおよそ55万(これでも少し値引き)
登記簿謄本紛失のための回復費、およそ20万。
コンビニ経営からの移動およそ、150万。
消費税の支払いおよそ60万。
借家契約6.5×4+(日割り家賃)でおよそ、27万。
引っ越し費用およそ、8万。
総額1070万。
100坪の土地の売却代金と父の預金の残高およそ800万のうち、
手元に残ったのは、150万ほどだった。
年をかさね、最近老後のことが気にかかりだし、老い支度を考えるように
なった。
借家住まいでニートが占めている家計では、預金もままならず、残る遺産は限りなく
ゼロに近い。
遺書なんていらんと思っていたが、順でいけば先立つ者としては、死後のことを無視は
できないようだ。
「老い」に備えようと読みだしたが、気持ちは暗くなるばかり。
昨冬に逝った人のように、対して悩まず、自分の好きなことだけして、苦しまず逝きたいもの。
でも、やっぱり備えは遺されたもののためには必要らしい。
ぼちぼち、やって行こう。
「老い」に備える
中山二基子
文春文庫