8月6日になると広島の話題が目につく。
一時期は夕刊に、平和宣言の全文が載った。
8月9日になると長崎の話題になった。
そして15日には終戦記念日として、例年高校野球の大会中に、黙祷が行われている。
夏の恒例となんとなく思っていた。
最近は平和宣言も探さなければ目に入らない。
広島の原爆ドーム。平和公園などの話題に比べ、長崎の話題が薄い感じがしていた。
単に、広島が早く、長崎が後だったからというようなものではなかったよう。
今回、この文庫本を読んで、広島と長崎の違いの深さを知った。
浦上天主堂が壊されてしまってすでにないことも初めて知った。
原爆は戦争に、原子は平和に使用されると中学校だったかの授業で学んだ覚えがある。
悪魔の兵器と称された爆弾を落とされたふたつの都市。
戦後、ふたつの都市の対応の仕方はまるで異なった。
ドームとして残した広島。
取り壊してあたらしく立て直した長崎。
それぞれの思惑によって異なる道を選んだ。
日本人は、本当は、どう、向き合うのか。
どう対応するのが最善なのだろうか。
平和宣言が段々遠いものになっている。
ナガサキ消えたもう一つの「原爆ドーム」
高瀬毅
文春文庫