9日の茨城・城里の震度5強地震 「実態違う」住民違和感 〝大きい揺れ〟観測傾向
2022/11/21 08:00
茨城新聞
(茨城新聞)
■気象台「異常なし」
茨城県城里町で震度5強を観測した9日の地震で、同町の住民から「実態と違う」という声が上がっている。今年に入り、同町小勝の震度計は、町内や県内の他の観測点よりもやや大きい震度が観測されるケースが続いている。震度計を緊急調査した水戸地方気象台は、「異常はない」として、今後も同地点で観測を続ける方針。専門家は震度計について、「実態と懸け離れた計測が続く場合は、定期的なチェックが必要」と話している。
「大きな震度が出ることに違和感を覚える」。震度5強を観測した設置場所と同じ小勝地区に住む男性(73)は、発生当時、城里町の隣の常陸大宮市にいた。県南部が震源で、同町だけが震度5強。テレビの全国ニュースも流れた。親族や友人から被害を心配する着信が携帯電話に次々と入った。急いで帰宅すると、自宅や近所で物が落ちるなどの被害は全くなかった。以前も同じようなことがあったといい、「今後も続けば震度計に対する信頼性が薄れる」と、移設を強く求めた。
上遠野修町長は「災害対策を担う人的資源には限りがあり、効率的な救助活動を行うには実態に即した正しい情報が前提となる」と指摘する。現在の地震計は実態よりも強い震度が表示される傾向にあるとして、「設置場所を移動してもらうことが適当と考えている」と話した。
同気象台や県防災・危機管理課によると、小勝の震度計は2009年製。県が翌10年に町役場七会支所(同町徳蔵)で運用を始めた。18年3月、支所機能などの移転に伴い、東側約1・4キロの現在地に移設された。
今年は別の観測点と比較して大きめの震度が際立つ。9日の地震では、同じ町内の石塚(常北地区)が震度4で、阿波山(桂地区)が震度3。福島県中通りを震源とする4月19日の地震では、ここだけが最大の震度5弱を観測し、他の観測点は震度4以下だった。
小勝で観測した今年の震度1以上の有感地震は、14日現在で107回。石塚は77回、阿波山は49回で、町内の他の観測点と比べ30回以上多い。県内では笠間市石井(137回)、日立市助川小(129回)、土浦市常名(112回)に次ぐ4番目となる。
震度計を巡っては、東日本大震災が発生した2011年3月に、周辺と比べて過大な震度が観測されているとして、気象庁が翌4月、防災科学技術研究所(つくば市)が設置した鉾田市当間の震度計の活用を停止した例がある。
ただ、同気象台は小勝の震度計移設には否定的な見解を示す。発生翌日の10日、現地で震度計や周辺環境を調査した結果、土台のひび割れや傾きなどがないことを確認したからだ。担当者は「異常なしと判断した。震度5強が観測されたのは事実」と強調する。
設置者の県も「気象台が問題なしとしている以上、移設すべきかどうかを評価できない」として、今後も継続使用する考えを示す。
地震学が専門で、産業技術総合研究所(つくば市)活断層・火山研究部門の今西和俊副研究部門長は「城里町は最近堆積した地層で揺れやすい」と指摘する。局地的に揺れが大きいケースは「よくある」という。震度計の異常は考えにくいとした上で、「実態と懸け離れた揺れ方が続く場合は、定期的な震度計のチェックが必要だ」と話した。