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利権鉱脈

2013-02-13 12:23:57 | 


松村美香「利権鉱脈」小説ODA 角川書店 平成24年11月刊

この著者が第一回城山三郎経済小説大賞を受賞していた人だとは知らず、偶然亡くなった姪と同じ名前で、中央大学の出身というところまで一緒なので、何気なく手にとって見たのがきっかけだ。たしかに城山三郎に似たタッチの小説だ。

題名から見て、ODA(政府開発援助)をめぐる、商社間のどろどろした利権争いの闇を描いたものかと思ったら、城山三郎が「官僚たちの夏」で描いた日本経済の存在をかけて国策を推進する経産省官僚と、下請け開発コンサルタントのやり取りを追った「いかにも」と思わせる小説である。本省と出先機関と下請けコンサルタント会社とのやり取りは著者が青年海外協力隊で経験したものだろうか、いきいきと描かれている。決して官僚の姿を否定的に或いは醜く描いてはいない。その意味で日本の現状に少し安心する。

ストーリーは、勢力争いをする各省に翻弄される出先機関の無気力な対応、ODAの実を追い求め、少ない権限の中で各国と渡り合う主人公、もう少し広い視野で日本の存在感を示そうとする若手官僚を描く。世界の第一線ではこんな苦労をしているのだと、アルジェリアのプラントテロ事件を思い出しながら、感慨を覚える。

ここでも省益争い、出世争い、組織防衛などという本来の役務とは縁遠い壁が第一線で活躍する人たちを悩ます。小説ではドラマチックなストーリーがあるが、現実には無味乾燥な障害になって、若い使命感に燃える人材を腐らせているのだろうな、ODAを形骸化しているのだろうなと推測させる。

行政改革に本気で取り組まないと、こうした組織的な人材潰しを政治は助長して居るような気がしてならない。復権した自民党は、利権の確保には熱心だが、中国の勢力伸長、欧米の退潮、シュールガス、レアメタルの重要性など、世界の資源の取り合いが激しくなる中で闘っている商社、支援する外郭団体の方向づけは大丈夫なのだろうか。