桐野夏生「柔らかな頬」1999年講談社刊
このところ、畏友から借りた本で上下二冊の本をよく読む。この著者も初めてだ。女性主人公の内面描写が主で、ミステリー仕立ての方はあんまり力が入っていないようだ。しかしこの内面描写が難解である。主人公がW不倫をするのだが、そのきっかけなどはかなり説得力があるが、あまりにも複雑である。
不倫のさなか、娘が謎の失踪をする。そこでストーリーが展開するが、謎解きなどはなく、がんの宣告を受けた、ハードボイルドな退職警察官とのからみが主となる。娘の失踪の謎解きは可能性として、夢の形や、伝聞など5つのパターンを提示するが、それはいずれも可能性を示唆するだけで、読者に委ねている。
私が歳を取ってきたせいなのか、どうもこう周り道をするような物語は苦手になってきた。