ピエール・ルメートル「その女アレックス」文春文庫 訳者橘明美2014年文藝春秋社刊
このところ蒸し暑い日が続く。おまけに梅雨とあってはっきりしない天気だ。本日もこの梅雨空の中本年2度めの草刈りをした。ここは比較的涼しいところなのに、作業をしているとじっとりと汗ばむ。
そんな中久しぶりに面白いミステリーに出くわした。畏友から借りた本の中では珍しい外国人著者である。フランスで読者大賞、イギリスでもインターナショナル・ダガーを英国推理作家協会から受賞している作品だ。当然国内のミステリー関連の賞をいろいろ受賞している。
作品の構成はミステリーなのであんまり触れられないが、登場人物のキャラクター設定が絶妙である。主人公の警部、直接の上司、予審判事、二人の部下がいきいきと描かれている。また女主人公アレックスがすざましい。次々とターゲットを殺してゆくのだが、その殺戮の場面がハードボイルドである。
動機が克明にならないまま次々と犯行に及ぶのでその残忍さが際立つ。また主人公警部の鬱々とした心情も秀逸な設定である。ストーリー展開が面白いのは言うまでもない。
そして最後に「我々にとって大事なのは(中略)真実ではなくて正義ですよ」と予審判事に言わせる。最近辞任したどこやらの政治家にも聞かせたい。