
重松清「定年ゴジラ」講談社1998年刊
私の好きな作家の一人重松清の作品。この著者のさりげない描写のなかに、共感を呼ぶ意味があり、我が身に引き比べ身につまされる。「3匹のおっさん」もそうであったが彼は爺キラーではなかろうか。
ホリエモンこと堀江清文が獄中生活の折、彼の著書を読んでいたと封ぜられるが、きっと檻の中で号泣していたと想像に難くない。
物語はニュータウンと呼ばれるバブル前後に開発された新興住宅地で、定年を迎えた勤勉なるおじさんの定年後の日常を描いたものである。特に趣味など持たない人達が「一生懸命」ブラブラする有様や、子供たちが巣立ってゆく時期にあたり、寂しさを味わう様子などが、ほぼ自分と等身大の姿で登場する。
大袈裟な仕立てもなくありそうなエピソードを挟んで、各家庭の変化、それに伴う各々の対応を見せる。標題はこの街の開発時に作ったジオラマをおじさんたちが、ゴジラよろしく踏み潰すことから付けられたもので、なかなか示唆に富んでいる。
やっぱりホロっとくる。この作者は好きだ。同年代の人達にお勧めする一冊だ。