遅いことは猫でもやる

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◯◯道の源泉

2018-01-17 03:58:38 | 


中路啓太「もののふ莫迦」中公文庫 2017年刊

本書は2015年度本屋が選ぶ時代小説大賞に満票で選ばれた作品である。豊臣末期の朝鮮出兵辺りを舞台とし、その中を痛快に生きた一人の武将を描いたものである。単なる忠義ではなく、大義に身を投じて一身を顧みず、また狭義の義理人情よりも義を重んずるいわゆる「もののふの道」を選ぶ。

日本人は「◯◯道」と言うものを好み、あらゆる範疇にこの傾向が蔓延しているが、現在スポットライトを浴びている日本の職人技の追求、商人の商いのやり方、経営者の舵のとり方など、いわゆるサムライの生き方の原点がこの「もののふの道」だろうと思われる。

葉隠を始めとする武士道は徳川幕府の時代に磨かれたのだろうから、この時代設定はいささか早いような気もするが、それはさておき、ここでは大きく二通りのもののふの道が提示される。一つは主君に対する徹底的な忠義、もう一つは弱い者や敗者に対する労り、目配りである。

神道の八百万の神、或いは「お天道様は見ておられる」の心境こそ日本の高度な品質管理の基礎である。こうしてみると、一君に盲目的に忠義を果たすと言うより、広義な使命感が我々をコントロールしている状態が健康で、主君に対する忠義に偏る時は何か危なっかしい。

とは言えエンタテイメントとしてもなかなか面白い作品で、著者の筆力もすごい。本屋大賞恐るべしである。


*追伸
明日から白内障手術を受けるため、暫くの間ブログ書きをお休み致します。無事済みましたらまた再開しますので、それまではお許し下さい。

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