遅いことは猫でもやる

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古典に触れる

2016-07-11 13:37:41 | 


大藪昌也訳「源氏物語・葵の巻」自費出版。2016年刊

高校の国語教師をしていた(現在でも常勤講師をしているが)義理の兄が、定年を機に知人から文化活動としての源氏物語の市民講座を頼まれ、現在も講読会を続けている。こういう講座は難しくはじめのうちは人が集まるが、次第に少なくなり、一年位で閉鎖する例が後を絶たない。

彼の口座は何故か人気が高く、もう6,7年続いているのだろうか。受講生が少しも減らず、どこまで続くかわからないが、ここらでちょっと句読点を打つということで、講義してきた口語訳を冊子にまとめたそうだ。

印刷物にしてみたいと依頼があり仲介の労を取ったお礼にその冊子を頂いた。私も恥ずかしながら源氏物語をキチンと読んだことがない。日本(ひょっとしたら世界)最古の物語というのに今日まで触れたことがない。名前は知っているのだが中身はとんとしらない。

光源氏というドンファンが主人公だというくらいの浅薄な知識だ。読んでみたらなかなかである。第一1000年も前も今も、人の心や心遣いはそれほど変わらないというのが驚きだ。国語教師らしく逐語訳で率直に口語訳にしてあるので判りやすい。

一方朝廷の人たちは毎日こんな色恋沙汰にうつつを抜かしていたのかとふと疑問に思う。毎日の糧の確保に奔走していたのではないかと思う反面、トップの帝の周辺はそんなこともなかったのかと謎が残る。全く別世界を見るようで現代の小説とは違った趣がある。夏の夜のファンタジーだ。 

ニッコウキスゲ

2016-07-06 15:41:26 | 行ってきました
    案内看板
    斜面に咲く
    近づいてみると

地元紙に「ニッコウキスゲ見頃」という見出しが出た。霧ヶ峰近くの車山へでかけた。家を出る時には頂上付近には雲がかかっていたが、着く頃にはとれていた。

近年鹿の食害で激減したと聞いていたキスゲが、電気柵の中で沢山咲いていた。日一面に咲くところを見ると壮観である。柵をめぐり少し先まで行ったが、やはり柵の中が主でそれ以外では、あまり咲いていない。

コバイケイソウが白い花をつけていた。車山の上に立つ遠くの電波塔がくっきりと見える。何年か前に来た時には斜面に一面咲いていたように記憶している。

    電気柵の表示
    強清水方面への標識
    コバイケイソウ
    斜面を覆い尽くすニッコウキスゲ

中年のカメラ趣味のひとが多いようだ。中には若い人もいるが、大きな望遠レンズと三脚を設定してシャッターチャンスを狙っている。雲間の太陽が出るのを伺っているのだろうか。かなりの時間待っていたようだ。

    車山の電波塔
    車山湿原上の斜面
    遊歩道付近のキスゲ

肉食女子

2016-07-05 14:53:14 | 


ピエール・ルメートル「その女アレックス」文春文庫 訳者橘明美2014年文藝春秋社刊

このところ蒸し暑い日が続く。おまけに梅雨とあってはっきりしない天気だ。本日もこの梅雨空の中本年2度めの草刈りをした。ここは比較的涼しいところなのに、作業をしているとじっとりと汗ばむ。

そんな中久しぶりに面白いミステリーに出くわした。畏友から借りた本の中では珍しい外国人著者である。フランスで読者大賞、イギリスでもインターナショナル・ダガーを英国推理作家協会から受賞している作品だ。当然国内のミステリー関連の賞をいろいろ受賞している。

作品の構成はミステリーなのであんまり触れられないが、登場人物のキャラクター設定が絶妙である。主人公の警部、直接の上司、予審判事、二人の部下がいきいきと描かれている。また女主人公アレックスがすざましい。次々とターゲットを殺してゆくのだが、その殺戮の場面がハードボイルドである。
動機が克明にならないまま次々と犯行に及ぶのでその残忍さが際立つ。また主人公警部の鬱々とした心情も秀逸な設定である。ストーリー展開が面白いのは言うまでもない。

そして最後に「我々にとって大事なのは(中略)真実ではなくて正義ですよ」と予審判事に言わせる。最近辞任したどこやらの政治家にも聞かせたい。

森林限界

2016-07-02 09:43:42 | 登山・ハイキング
   レンゲツツジはもう盛りを過ぎかけていた
    斜面は森林限界の上にあった
    山道の交差点

梅雨の合間をぬって鉢伏山に行ってみた。塩尻峠経由で高ボッチ高原に着きそこから鉢伏へ向かった。森林限界を越え、右手に鉢伏山をみながら鉢伏山荘手前1kmくらいにジムニーを止め歩き始める。

山荘近辺にはレンゲツツジが満開を少し過ぎて咲いていたが、風は心地よく車から20分足らずではるか先と見えていた山荘に、舗装道路を辿ってすんなりとついた。そこから大きな山容の草原をゆるやかに登ってゆく。

    風が涼しい山道
    山荘別棟
    振り返れば雲湧く道だ

緩やかな風に頬を嬲られ、野麦とレンゲツツジの道を快適にハイキング。四方に雲が湧き、見通しはあんまり良くなかった。頂上付近から降りてきた人が「今向こうでカモシカに出会ったよ」と教えてくれる。

正に鉢を伏せたように、どこが頂上かわからないなだらかな山頂を過ぎ展望台に向かう。コンクリートの展望台の上にはハエやアブが一杯いてゆっくり出来なかった。肝心の眺望は諏訪湖、天竜川、八ヶ岳ぐらいで、南アルプスや、富士山、御岳、乗鞍などは雲の中、西穂、北穂、奥穂が雲の切れ間から垣間見えるくらいだった。カモシカにも会えず。

それでも展望台で一杯飲んで、気持よく帰途についた。松本平は広く、ところどころガラスが反射し、道脇にはポツポツとニッコウキスゲが黄色の花をつけていた。
    頂上の標識
    雲湧く諏訪平方面
    ニッコウキスゲ

哲人大統領

2016-07-01 00:51:14 | 


佐藤美由紀「世界で最も貧しい大統領ホセ・ムヒカの言葉」株式会社双葉社 2015年刊

先日民放の招きで来日したウルグアイの大統領、ホセ・ムヒカの歴史的演説「最も衝撃的なスピーチ」から始まるこの本は興味深い。

およそ一国のリーダーに相応しいのは、国民を勇気づける哲学を持っていること、それを伝えるコミュニケーション能力、裏付けとなる行動力、があること、などであろう。

後半の二つの要件については、彼はキャッチフレーズにあるとおり、また革命運動の戦士であった経歴が示すように抜群である。

しかし彼の真骨頂はパフォーマンスでなく、自身の経験から生み出された生き方にある。強がりや自慢などの無理がない。彼の住居は3つの部屋の平屋、車は中古のワーゲン、大統領や国会議員の報酬の90%は寄付しているという徹底ぶりである。

「私は貧乏ではない。質素なだけなのです」「物であふれることが自由なのでなく、時間にあふれることが自由なのです」「人間の最も大事なものが、『生きる時間』だとしたら、この消費主義社会は、その最も大事なものを奪っているのですよ」

彼は資本主義を否定しているのではなく、このシステムに支配されている社会に警鐘を鳴らしているのだ。進歩、発展のエンジンである利益追求に支配されている人間社会を批判している。

主張は単純明快。「民主主義では指導者は多数派の立場に立つべきである。多数派=貧困層のためにベーコンを少し厚切りにすることに力を注ぐことこそ政治の役割である」

幸せを追求するはずが、利益を追求することにすり替わって幸せを犠牲にしている現状を鋭く指摘している。彼の前では既存の政治家のなんと色褪せて見えることか。こうした哲学を訴え、人間社会を変えてゆこうと言う壮大な変化に、チャレンジしている姿に皆共感を覚えるのではないだろうか。

胆力、努力不足の私などが同じようなことを言っても相手にされないが、経歴から言っても実績から言っても、この人の言葉は行動に裏打ちされているので深みが違う。世界中の人がムヒカの哲学を実践したら地球の危機は救えるのかもしれない。

日本の現状の政治を見直すうえでも一読に値する。