唐松林の中に小屋を建て、晴れた日には畑を耕し雨の日にはセロを弾いて暮したい、そんな郷秋<Gauche>の気ままな独り言。
郷秋<Gauche>の独り言
この地で教師に
「福島に生まれ、福島で育って、福島で働いて、福島で結婚して、福島で子どもを産んで、福島で子どもを育てて、福島で孫を見て、福島でひ孫を見て、福島で最期を過ごす。それが私の夢なのです」
福島県立福島南高等学校3年、佐藤李さんが、昨年福島県で行われた全国高校総合文化祭で発表した創作劇のクライマックスを飾った言葉だと云う。残念ながら郷秋<Gauche>はこの劇の事も、18歳にしてこれほど強い意志をもって福島で生きようとする佐藤李さんの事も、今日の神奈川新聞を読むまで知らなかった。
その佐藤さんが昨日、福島大学の入学試験に挑戦した。大学で音楽を学び教員免許を取り、卒業後は合唱が盛んな県内の中学校で、生徒と人間としての付き合いが出来る教師になるのが夢なのだと云う。
今年の福島大学の前期日程の倍率は県内の志願者が大幅に増え、昨年よりも0.4ポイント高い3.4倍なのだと云う。受験者激減を懸念した福島大学の入学広報活動が実った結果でもあるが、それにも増して福島のために福島で学び、福島で働きたい高校生が多かったと云う事なのだろう。嬉しい驚きである。
翻って、福島から遠く離れた地の津波による瓦礫の受け入れを拒否し、福島県内は云うに及ばず隣接県への修学旅行にも反対する人たちの動きが後を絶たない。そんな人たちに、福島のために福島で生きる覚悟を決め懸命に努力する福島の若者がいることを知ってもらいたい。
原発の恩恵に浴してきたと云う意味では東電と共に加害者の一人でありながら、瓦礫の受け入れを拒否し修学旅行に反対し、福島県産品の購買に躊躇するする人たちは、真の被害者でありながら、苦悩しながらも未来を見据え福島の地で前に歩いて行こうとする彼らの姿を見て、果たしてどう思うのだろうか。
佐藤李さんをはじめ、今、あえて福島で学ぶことを志したすべての福島大学受験者に、朗報が届くことを祈らずにはいられない。
「サクラサク(桜咲く)」とは、合格を知らせる電報の決まり文句であったが、合格の知らせのある2月中旬・下旬、3月上旬の東北はまだ雪の中。桜どころか梅の蕾さえも襟元を固く合わせている季節である。それを知った上で、佐藤李さんをはじめ、すべての福島大学受験生に今日の一枚を贈りたい。