「日本新聞協会の声明」について考える

 昨日の神奈川新聞で、日本新聞協会が新聞、書籍、雑誌の消費税には低減税率の適用を求める声明を公表した事が報じられていた。この記事によれば、新聞協会は「書籍・雑誌は知識、教養を普及する役割を果たしているのだから低減税率を適応すべきである」と主張している。同時にヨーロッパ各国の標準税率と新聞に対する税率の一覧表を掲載し、主要国では一桁の税率に抑えられていることを紹介されている。

 しかしだ、雑誌と一括りにされているが果たして「エロ本」と呼ばれる類の雑誌が「価値ある」知識、教養を普及していると云えるのか。確かに性風俗の知識普及には貢献しているのかも知れないが、それを教養と呼んで良いとは私は思わない。また、確かに一桁の税率を適用している国が多いことも事実だが、掲載29カ国中ブルガリア、リトアニア、スロバキアのように新聞にも標準税率が適用されている国が三カ国あることには触れられていないし、例えばアジアでは、旧ソ連諸国では、北米・南米では、アフリカではどういう状況なのか触れられていない。自分の主張に都合の良いデータだけを掲載し自説を補強しているようにしか私には思えない。

 そもそもだ、人間に求められる価値は知識だけなのか。人間文化の要素(価値)を知・徳・体と表現されることは多い。またある思想家はその要素(価値)を真・善・美・聖・健とも表現する。新聞協会が主張する要素(価値)は知もしくは真に当たる部分だけではないのか。ヒトが人間となるために必要な要素(価値)は徳(善・聖)もあれば体(健)もあるし美(芸術)もある。知識=真に当たる部分だけを取ら上げるのは知育偏向ではないか。

 人格形成、人格の陶冶の為には知育が大切であると同時に、徳育も体育も美の教育も宗教心の涵養も大切なはず。ならば、知識、教養を普及する役割を果たしていると新聞協会が主張する新聞や雑誌にだけに低減税率を適用するのではなく、体育に必要なスポーツ用品やウェアにも、美(芸術)の教育に必要な楽器にも絵具にも、コンサートやオペラ、美術展、芝居のチケットにも低減税率を適用するべきではないのか。

 新聞協会には、新聞の発行部数=売上が低下するのを防ぐために新聞への軽減税率適応を適用せよとの論陣を張るのではなく、世論をつくる新聞だからこそ新聞のことはさて置いてでも、調和ある人格を育むための教育にかかるすべてのものに軽減税率適応すべきであると主張して欲しいものである。


 例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、「雪のあと」。

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