21話はわが子よ(原題はLost Youth)です。
今回は、ディードとジョーの愛憎劇部分?がかなりな部分を占めていました。
こういうことで取り乱した?ディードは、個人的には、あまり好きではありません。
秘書さんのクープも最近はうんざりとした様子がみえみえです。
男女の愛のもつれは、やっかいですが、
ディードには、内面はどうであれ、対外的にはもう少しクールであってほしいです。
(それじゃ、ディードらしくない??難しいですね。)
今回は、法廷での審理の流れについては、特記すべきことはありません。
今回のテーマはこどもの死に直面した親たちの思いでしょうか。
1 マクドナルドは、ディードの厳しい判決を受け、自殺してしまいました。
携帯電話の窃盗については、実刑というガイドラインがあり、それに従って
マクドナルドは施設送りになったのですが、
事件の流れをみると、いつものディードなら、「社会内での更生」のように思い
ますので、ジョーに対する腹いせの可能性もあるように思います。
ただ、実際のところどうかというと判断は難しいです。
人が犯罪を犯すのは悪い人だからというわけではありません。
むしろ「弱さ」であることが多いのです。いわゆる「いい人」は
往々にして犯罪に巻き込まれ、自覚なしに犯罪を犯すものです。
モンティが実弟の例を話していましたが、要は本人次第です。
最終的には、マクドナルドのお母さんもそれがわかったようです。
としても、子供を亡くした母親も悲しみ、つらさに変わりありません。
ただ、現実を受け入れ、その悲しみ、つらさを乗り越えて、前に進む
しかないのです。
クープも一瞬の不注意でプールで息子を溺死させたという辛い過去が
あったのですね。
ただ、携帯電話を盗めば必ず実刑というガイドラインは、ばからしいと
思います。
携帯を持っているから金持ちの子だ、という検察側の主張は、日本では
理解できない気がしますが、いずれにしろ、実刑にすべきという
根拠は何なんでしょうね。
2 ディードのいいところは間違っていたと思うとそれを直ぐに正すことでしょう。
ただ内務大臣のニール・ハウトンのディナー・パーティに酔っぱらって押しかけた
のは、いかがなものかと思いますが・・。
あるいは、そういうところが魅力なのでしょうか?
3 アイフォン君の蘇生をするかしないかについては、本当に気の重くなる
ような決断が迫られています。
日本では、こういう裁判はあまり見ませんが(死亡した後で、同意があるない
で争うことがありますが)、英米ではよくあるのでしょうか、ドラマでは
良く見ますね。
ディードは、事実上の措置として、実際に病院にいって、アイフォン君の
様子をみ、看護婦さんたちの意見をききます。
ディードは現場主義です。現場に行くといろいろ見えてくるものです。
手を握ったときの力強さに生きていることを感じたのかもしれませんね。
心臓移植を拒んでいた子供の事件のときも、直接病院にいって話をしていましたね。
ただ、命を止めるという決断はなかなかできないことのようです。
ディードがクープに判例のことを話していました。
あれはきっと、親にとって子供というのは、現実に生きている(肉体)から
意味があるというわけではなく、死んでも、魂が、その精神が、親の心
に生きている、それが重要なんだというようなことだったのだと思います。
そうすると、必ずしも、苦しむのを無理に生かしておく必要はないということに
なるのでしょう。
アイフォン君の場合はミラクルが起こったようです。
このようにミラクルが起こる可能性があるので、命を絶つことに手を貸したくない
ということになるのだと思います。
4 内務大臣に反旗を翻らせるために、ディードやモンティが密談をしていますが、
どうやら成功しそうということでした。
これは、当時のイギリスの司法を巡る状況を知っていなければ理解が困難と
思います。
大法官府が三権の全部に関わるといういう巨大権力になっており、それを
改善する必要がありましたが、どのような形にするかについては、それぞれの
利害関係者間で綱引きがあったようです。ブレア政権下のことです。
判事たちは政府が基準を決めることについて、決していい感じを持っていません。
ディードが「好かれているというよりは、内務大臣が不人気なだけだ」とありますが、
これも内務大臣個人なのか、そういうポストなのかはどちらともいえません。
判事たちの反乱は、自らの自由が奪われることに対する反感です。
自ら旗振りはしないとしても、ついては行くというわけです。
結局、イアンのいうように、司法が機能不全に陥るというわけです。
そういうことで、ニールも妥協せざるを得なかったというわけです。
大法官府、憲法事項省、内務省の関係が落ち着くのは、もう少し後になって
からです。このドラマのころは、司法そのものが不安定な時期だったのです。
5 ジョーの恋人のマークがイアンの手先ということでしたが(前回)、女性判事の
モラグこそ、イアンのスパイだということが明らかになりました。
彼女は最年少のハイコートジャッジでしたし、またDameに叙せられることになった
ようですが、この異例の抜擢はスパイとの引き換えだったわけです。
ディードだけでなく、判事全体の動きを知るためなのでしょうか(そのようです)。
その狙いは何なのでしょう。これから見えてくるのでしょうか。
イアンの動きがもうひとつわかりません。
モラグはディードに積極的に近づいていましたので、これからの展開が
面白くなりそうです。でも、モグラはディードに魅かれているようなので、
イアンを裏切るなどということも?
ただ、モラグで気になったのは、彼女は「ヒューム夫人」と呼ばれていました。
ヒュームといえば、第6回の「権力の乱用」で自殺したパープル判事がヒューム
でした。関係あるのでしょうか?
6 チャーリーですが、仲間のバリスターにストーカー?されているということでした。
ストーカーといってもどちらがより熱心かということだけだそうですが・・
ソレルですが、以前にカントウエルから注意されたというのが彼でした。
ですが、最近は、一人前のバリスターになったようで、検察側、弁護人として
よく法廷に出るようになっています。
なお、チャーリーは最近ではパンツスーツが多いようです。
例の通達以降、女性たちもパンツをはくことが多くなったのでしょうか。
なんたって海の向こうのアメリカではヒラリーのパンツスーツが有名になって
いますものね。
世界的な流れです。
7 この6日、ロンドンで暴動が発生し、それがマンチェスターやバーミンガムに広がり
深刻な状態が続いています。
原因については、まだはっきりしたことはいえませんが、貧困層の若者の存在、
不良グループの存在などが指摘されており、特に犯罪行為の蔓延に対する
社会の不安は大きいものがあるようです。
判事も量刑にあたって、こういう社会の動きを無視できませんが、政治家である
内務大臣などは有権者である世論の動向には神経質になります。
判事ディードのドラマも、そういう社会背景の中で製作されたものだということを
知っておくと、ドラマの理解がより一層深まるように思います。
8 このところモンティの個人的なことが少しづつわかってきています。
イギリスは身分社会と言われていますが、それでも実力によって這いあっていける
社会でもあり、あるいは落ちていく社会でもあることが垣間見られます。
モンティの娘はプラマー(配管工)と結婚していることが前回わかりました。
多分、配管工というのは労働者階級の典型的職業ではないかと思うのです。
というのは、オバマの大統領選挙のときに、プラマーのジョーだったと思うのですが、
一躍有名になったことがあるからです。
また、ディードの養親はパンやさんでした。
一方、ディードの前妻のジョージは父はジャッジであり、娘のチャーリーも
バリスターであり、三代続いた法曹一家です。ジョーは今度は内務大臣と
結婚しようとしています。
ちょっと飛躍しますが、キャサリン王妃は中産階級出身です。
貴族が存在し、叙勲制度がのこっているものの、努力が報われる社会、
チャンスがある社会であることは事実のようです。
一億総中産階級的な、みんな平等の日本とは違っているようです。
9 最後にディードはジョーとの関係で奇跡を誓いますので、これからも
二人の縺れた関係はきっと続くのでしょうね。
私は、その国の社会を本当に知るためには、裁判を見るのが一番と考えています。
ディードのドラマをみるとその通りだと思います。
ますます楽しみです。