妻一人 子一人 と 一匹

2005.9.26 『妻一人 子一人』としてスタート
2010.3.18、2021.8.28、2023.3.26 改変

かえり船

2013年04月27日 00時44分13秒 | Weblog
28年前、母方の祖母が自宅で家族が見守る中、息を引き取った。

せず、私たちは祖母が死んでゆく一部始終を見送った。

たまたま兄も帰省しており、私たち二人が最後に交わした言葉は、

兄&私:「おばあちゃん、おばあちゃん」

祖母:「ありがとう ありがとう」 だったと記憶している。


病室でなくなるのが当たり前の今の世の中、なんの手も施さずに

祖母が死体となっていくその場に立ち会うことができたのは、とても良い経験だったと思う。

心霊とか超常現象には全く無縁の私だが、祖母が臨終する際、脈が止まる少し前に

呼吸が止まり体が硬直していったとき、ヒトの体から魂が抜けていくとはこのことだと思った。

あの瞬間は今でも鮮明に残っている。


当時12歳の私は、祖母が亡くなる前兆なんて全然気づきもしなかった。

父が年賀状を書こうと2階へ上がろうとした私に

「ばあちゃんにもしものことがあったら年賀状は出せないからね」と耳打ちした。

それから間もなくして、その日がやってきた。

最後は、母が祖母の手を握りしめ、枕元では母のすぐ上の兄である叔父が

カラオケで歌ったのを録音した田端義夫の「かえり船」がくり返し流れていた。



あの曲は、まさしく祖母のエンディングテーマだった。


今思うとなんて幸せな臨終だろうって思う。