ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

<届かぬ声 置き去りにされた有権者>(上) 郵便投票制度

2017年10月06日 03時14分12秒 | 障害者の自立

 政権維持のため電撃解散に打って出た安倍晋三首相。だが、最も政治の手を必要とする当事者は、またも置き去りにされようとしている。投票する権利も意思もあるのに、高齢などで心身が弱り、投票できなくなった有権者たちだ。郵便で投票する制度があるが実際にはハードルは高く、改善の提案も議論されないまま。与野党の議論は白熱する中、本当に困っている当事者の声を聴く姿勢は見えない。 (三浦耕喜)

 総選挙へと走りだした国会で、受け止める者がいないまま放置されている報告書がある。今年六月十三日に総務省の有識者研究会が公表した「高齢者の投票環境の向上について」。「投票の意思があっても、投票に行けない高齢者の投票環境の向上は重要課題」と位置付け、半年以上の議論を経てつくられた。

 「投票の意思があっても、投票に行けない高齢者」。その多くは政治家ならだれもが国政の大事と口にする介護保険制度に支えられている。だが、そういう「消えた有権者」がどれだけいるかという基本データすら、国は把握していない。

 本紙は年代別の投票率に着目し、八十歳以上に限っても二百万人以上が「消えた有権者」になっている可能性を今年四月五日付で指摘した。施設入所者は施設内で投票できる場合もある点を考慮する必要はあるが、投票困難者は八十歳未満にもいる。「二百万人以上」は、寝たきりとなる率が急増する要介護3以上を足した約二百二十万人とも符合する数字でもある。

 研究会の報告書は不十分ながら改善の方途を示したものだ。

 現状では、在宅での郵便投票が認められているのは、重度の障害者の他は「要介護5」の人のみ。これを要介護4、3の人にも拡大するべきだと提言した。要介護4の九割、3の半数が寝たきり状態にあるという実態をくんだ提案だ。報告書を公表した記者会見で、高市早苗総務相(当時)は早期実現を期待しつつも、「各党各会派での議論も必要だ」と、国会での議論を促した。

 だが、突如の解散で、議論されないまま総選挙へ。「『消えた有権者』は放置されたということです」と話すのは、大阪の大川一夫弁護士。障害者を含め、ハンディを負うために一票が投じられない人々の相談に乗ってきた。大川弁護士は言う。「最も政治が守っていくべき人たち。その当事者が声を上げられないまま、政治が決められようとしている」

 そもそも、「現行の郵便投票制度が煩雑すぎる」と大川弁護士は指摘する。地元選挙管理委員会との間を何度も書類をやりとりし、ようやく郵便での一票が認められる。本人の自筆が原則で、代筆なら手続きはさらに増える。「ただでさえ弱っている人たちに、さらに手間をかけさせるむごい制度だ」と大川氏。

 昔は広く代筆も含めた郵便投票が認められていた。だが一九五〇年代にそれを悪用した選挙違反が多発。一度制度を廃止し、手続きを厳しくして復活させた経緯がある。「それは半世紀前の話。今やさまざまな技術で本人の意思が確認できる時代だ。高齢化社会が到来するのを知りながら、『この人の一票も』という努力もないまま、漫然と数十年が過ぎた」と大川弁護士。

 報告書には「情報通信技術(ICT)の活用で在宅で投票できる環境の向上」との方向性も示されている。だが、果たして何人の国会議員が報告書に目を通したのだろうか。問われることもないまま、総選挙が始まろうとしている。

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東京新聞  2017年10月4日


発達障害児の療育施設 佐賀に開所、未就学児対象

2017年10月06日 03時10分13秒 | 障害者の自立

 発達障害と診断された未就学児の療育を行う施設「クラスルームといろ」が、佐賀市保健福祉会館(ほほえみ館、佐賀市兵庫北3)内にオープンした。市が運営し、就学するまでの継続的な療育を提供する。

 発達障害は早くから療育を行うことが重要とされ、市はこれまで同会館内の1室で3歳児までの療育を行ってきた。その後、対象児は別の事業所に通うことになるが、専門的な療育ができる事業所が限られていて長期的に通えない子どもがいたことから、市が新たに開設した。

 同会館4階の会議室を改装し、一度に複数の子どもを療育する部屋と個別対応用の部屋を設置。事務室と療育用の部屋の間に子どもが親を意識しないようマジックミラーを設け、事務室で待機する保護者からは様子を見られるようにした。

 施設の職員のうち、管理者と事務担当者は市子育て総務課の職員が兼務。児童発達支援管理責任者と、指導員ら計5人が療育にあたる。発達障害者らの相談を受けている機関「another planet」(アナザープラネット、武雄市武雄町昭和)が指導方法などをアドバイスする。

 定員は50人。1日当たり午前5人、午後5人を見込み、既に41人の利用が決まっているという。土日、祝日は休み。費用は1回につき1000円程度かかる。

 2日に式典があり、アナザープラネットの服巻智子さんが「子どもが育ったときに、通って良かったと思えるようなプログラムを提供してほしい」と述べた。

2017年10月05日 Copyright © The Yomiuri Shimbun

福祉にも編集は通用する!

2017年10月06日 03時05分58秒 | 障害者の自立

 大阪のオフィス街で障がい者の都市型就労支援モデルをつくるソーシャルカフェ「GIVE & GIFT」

「障がいを持った人たちの仕事」と聞いて、あなたはどんなものを思い浮かべますか?

福祉施設が運営する飲食店でクッキーやパンを焼く、店頭に出て給仕をする、クラフト品や雑貨をつくる、といった作業を想像する方が多いかもしれません。では、その仕事で、彼ら・彼女らがいくらの対価を受け取っているのか、ご存知でしょうか?

一般的な企業に就職するのが難しい障がい者に、就労・生産・訓練などの機会を提供する「就労継続支援事業所」において、支払われている月額の平均工賃は、雇用契約を結ぶA型事業所で67,795円、雇用契約のないB型事業所では15,033円(出典:厚生労働省 平成27年度工賃(賃金)の実績について)。大阪府内のB型事業所の平均はさらに下がって、全国最低の11,190円とされています。

障がい者には障害年金もありますが、月に20日間働いても、これだけの対価しか得ることができていない現実があります。

そういった状況に対して、厚生労働省は、「障がい者の経済的自立に向けて、工賃をアップする取り組みが重要である」とし、各都道府県において『工賃倍増5か年計画(平成19年度~23年度)』や、『工賃向上計画支援事業(平成24年度〜26年度)』を実施してきました。

それらによって、確かに工賃の水準はやや向上の兆しをみせています。しかし、工賃の問題は本質ではないというのが、就労支援を3年間やってきて行き着いた結論です。

そう話すのは、ビジネスモデルが2016年度グッドデザイン賞にも選ばれた就労継続支援B型事業所「GIVE & GIFT(ギブアンドギフト)」代表の中川悠さん。もともと雑誌編集者だった中川さんは、10年ほど前に起業し、さまざまなプロモーションやブランディング、クリエーターのマッチングや仕事づくりなど、実に多彩な仕事を手がけてきました。

そんな中川さんがなぜ福祉の業界に飛び込んだのか、どんな挑戦をして、どんな成功と失敗を積み重ねてきたのかお話を聞いていくと、さまざまな仕事を経験し、自ら福祉施設を経営したからこそ見えている少しだけ新しい福祉の世界がありました。

中川悠(なかがわ・はるか)
精神科医療機関を経営する母方の祖父、技師装具の開発をする父をもつ。20代は大阪の情報雑誌の編集者。その後、障がい者福祉・高齢化・産業の低迷など、「社会の困りごと」を解決できないかと、2007年に「株式会社GIVE & GIFT」を、2012年に「NPO法人チュラキューブ」を立ち上げる。一人ひとりの障がい特性に合わせた仕事づくりに奔走し、「食品廃棄×冷凍ロールケーキ」「高齢者×お墓参り代行」「大学の資料×スキャン」など、新しい発想で工賃向上に貢献。2014年には大阪・淀屋橋に「オフィス街のランチカフェ×障がい者福祉施設」をテーマにした、就労継続支援B型事業所「GIVE & GIFT」を設立し、2016年度グッドデザイン賞を受賞。今も障がいのある人々の「働く力」を少しでもプラスに変えられるようなアイデアをカタチにしている。

都市型の福祉事業所にはメリットがいっぱい

大阪・淀屋橋にある4階建てのビル。この丸々一棟が「GIVE & GIFT」です。1階はカフェ&コミュニティスペース、2階はカフェの料理をつくるキッチン、3階は企業などから依頼された軽作業をする作業場。そして4階が事務所となっています。

創業150年の幕を閉じた酒屋さんのビルをリノベーション。名前はあえて残しました。

施設利用者の方たちは、キッチンで仕込み作業を行ったり、作業場で布巾をたたんだり、マットを機織したりという仕事を通じて、生きる力と伝える力、働く力を身につけようと、日々訓練に取り組んでいます。

関西に土地勘がない方にはわかりづらいかと思いますが、淀屋橋といえばオフィス街のど真ん中。とても便利ですが、高層ビルが立ち並び、人も多く、通例では福祉施設をつくるには適さないとされる立地です。

しかし、中川さんはむしろこの場所に大きな可能性を感じ、あえて淀屋橋を選びました。

福祉施設の多くが郊外にあります。でも、郊外でつくったものを人が少ない郊外で売るのはとても難しいんですよね。であれば、人の数も多く、消費活動も盛んな都市でつくったものを都市で提供できれば、売れるんじゃないか。そうすれば、少しでも工賃を上げることができるんじゃないか、というのが最初の気づきでした。

一般的な郊外型福祉施設では、ビジネス経験の浅い福祉職員が、マーケティングのなされていない商品を考案し製造。郊外で販売先も少ないため、販売数が伸び悩むということが多くあります。

一方、「GIVE & GIFT」では、管理栄養士と生産者、そして福祉職員が一緒に商品を考案し、近隣の店舗を調査して適正価格の料理を提供しています。集客力が高さを生かして販売数を伸ばし、月20日の通所による工賃も1.5万円〜3万円を達成。全国の月額平均工賃を上回ることに成功しているのです。

一番人気のメニューは、淡路島産たまねぎを使用したバターチキンカレー。650円。

中川さんは、都市で福祉施設を運営することに多くのメリットを感じているといいます。

日本社会が縮小に向かい、街のあり方もコンパクトシティという方向に向かいつつある中で、さらに都会に仕事が集まっていくとすれば、障がいのある人たちも街に通い、街で働く力を養う必要がある。だからこそ、街で就労支援を行うことには大きな意味があると思っています。

また、街にいると、お客さんが多いのはもちろん、企業も多いので、施設の作業や新しいコラボレーションが生まれやすく、カフェでの調理や清掃以外にもさまざまな仕事が発生し、利用者さんたちが自分の得意ごとに出会いやすくなります。より一般就職をイメージした就労環境づくりがしやすいんですね。

都市型のメリットは、支える側にもあります。

利用者さんの工賃アップにつながるような仕事や仕組み、商品をつくるのも、利用者さんのモチベーションをあげる工夫を考えるのも、本来は支援員の仕事。それがなかなかできないのは、彼らは福祉の専門家でありながら企画やビジネスの視点や経験が少なく、やり方がわからないからです。

街のカフェを通じて多様な人たちに関わりをもつことで、お客さまへのサービスや商品への意識が高まったり、新たな視点に出会って考え方に変化が生まれたり、ということが起こりやすくなると思っています。

「GIVE & GIFT」の運営以外にも、中川さんたちは都市であることをフル活用して、障がい者同士のネットワークづくりや未来の福祉を担う学生たちのインターンの受け入れ、外部の福祉施設職員へのスキルアップ教育や、支援学校・企業に対する啓蒙活動など、実にさまざまな角度から福祉の未来を明るいものにすべく、アプローチを続けています。

福祉に編集は通用する

2017年現在、39歳の中川さんは、大阪で雑誌編集の仕事に従事する20代を過ごしました。福祉の世界との関わりは、福祉施設を経営していた精神科医の叔父さんから、「売れずに無駄にしてしまっている施設のパンを売れるようにできないか?」と相談を受けたところから始まります。

雑誌編集者時代の中川さん。若い!(笑)

「パンをつくって売りに行き、売れ残ってしまったものは捨ててしまう」、そんな状況を知った中川さんは、単純に「商品をつくってすぐに冷凍して、注文があったら提供するしくみに変えればロスが減るのでは?」と思ったといいます。そして、雑誌の企画で『ロールケーキのお取り寄せ特集』をつくった経験を活かして、冷凍ロールケーキを製造して販売していこうと施設に提案しました。

障がいのある人たちでもつくれるレシピをみんなで一緒に考え、パッケージはクリエイターに依頼し、フェアトレードの紅茶を材料に使うなど、トピックになりそうな素材も盛り込み、広報も学生インターンシップを交えて行いました。

すると、一連のプロモーション戦略が功を奏し、新聞・ラジオなど、さまざまなメディアに取り上げられたのです。商品は飛ぶように売れ、年間1人しかいなかった施設の企業就職者が6人に増加。地域の企業が協力を申し出てくれるようになり、行政が優先的に仕事を出してくれるようにもなったそう。この時、中川さんは「福祉にも編集が通用するんだ」と確信したといいます。

このことを契機に、福祉施設や行政から、仕事づくりワークショップやプロモーション研修の相談が入るようなっていきました。そこから実際に、書籍のスキャン事業、お墓参り代行事業といった、新たな仕事が生まれたそうです。

関わりが無くなった途端にビジネスが停滞する理由

しかしこの頃、中川さんは、関わっている時はビジネスが上手くいっていても、自分たちの関わりがなくなると停滞してしまうという現実に直面。そしてその原因が、施設職員の意識と、職員が育ってくる構造にあると気がついたといいます。

精神保健福祉士や社会福祉士になるためのカリキュラムには、パンづくりも清掃作業も、軽作業の工程管理も含まれていません。でも、彼らは学校を卒業すると同時に、何の疑問も抱かずに、学んでいないパンづくりや清掃の指導を障がいのある人たちに対してするようになる。

そういう施設が全国に山ほどあるんです。利用者さんの代わりに作業のほとんどを職員がしてしまう施設も少なくありません。なぜ代わりにやるのか聞くと、「作業をしないとこの子たちの工賃が生まれないから」という返事が返ってくるんですね。

でも、代わりにやってしまうと利用者さんの訓練にならないし、職員が仕事そのものを生み出す時間もなくなります。利用者さんの仕事がないんだから、工賃も上がらない。職員は、作業を代わりにやるのではなくて、できるやり方を考えるとか、できる仕事を生み出すことにもっと真剣に取り組まなければなりません。

この状況を、福祉の人材を育てる教育機関が疑問視していないことにも、この状況下で厚労省や行政が「工賃アップが障がい者の社会的自立につながる」と言っていることにも、中川さんは違和感を感じています。

「地域の優良な施設を知っていますか?」「全国的な福祉の良い事例を知っていますか?」と聞いても、ほとんどの施設職員が「知らない」と答えます。福祉施設だって、きちんとしたビジネスモデルがあればよくなるし、もっと企業努力をすれば、障がいのある人たちの仕事も生まれる。工賃も上がっていくはず。

でも、それを当事者じゃない人が言ってもなかなか現場には伝わらない。だから僕は自分で福祉施設を立ち上げて、事例をつくることにしたんです。

工賃アップは結論ではない

そうして、中川さんが自ら施設を経営するようになって3年。うまくいったり、失敗したり、生身の体験を積み上げて今強く感じているのは「工賃アップだけでは何も解決しない」ということだといいます。

もちろん工賃が上がっていくのはハッピーなことです。でも、工賃が5万円・10万円になることが彼らの社会的自立に直接つながるとは到底思えないんです。

大事なのは、訓練をする中でいかに社会を感じてもらい、社会とのつながりをつくるのか。今の自分の行いが誰のため、何のためになっているのか、感じてもらえる可能性がある仕事をたくさんつくることなんじゃないかと改めて思っています。

「GIVE & GIFT」で行われている作業のひとつに、「株式会社KUROKAWA」というファッションリサイクル会社と協力して、使われなくなったデニムを加工した糸で足拭きマットを“はた織り”するというものがあります。このマットはカンボジアの学校に寄贈され、現地の人たちの手に渡った写真が送られてくるように設計されています。

海を越えて送られてきた現地の小学校の写真を見ながら、利用者さんに向けてカンボジアことをレクチャーしています。ただ作業をするのではなく、自分たちがつくったものが海を越え、海外の人たちの生活の役に立っていることを感じてほしい。

それが利用者さんの就労感向上につながるかは正直わかりません。でも、いつか彼らがここを卒業して企業に就職をした時に、「前の施設で、この仕事は誰かの役に立っていると言っていたな」と、仕事をする中で思い出してくれることがあるなら、それは何よりもうれしいことですね。

施設内の全ての仕事で、社会とのつながりを実感できる仕掛けができているわけではありませんが、自分がつくったものが使われている、食べられている、喜ばれているという現場を見せ「誰かの役に立っていると感じること」は大事だと思って、日々、コツコツやっています。

「福祉×伝統工芸」に秘められた一石何鳥の可能性

そして今、中川さんが新たにチャレンジしているのが「福祉×伝統工芸」の取り組み。京都市障害保健福祉推進室から打診を受け、後継者不足に悩む伝統工芸を守り、障がいのある人の新しい雇用の枠を開拓するため、工芸品製作の一部を障がい者が担うというトライアルを始めています。

1887年創業の和ろうそく会社「中村ローソク」さんにご協力いただいて、知的障害や精神障害のある方たちとろうそくの絵付けに挑戦したんです。

実際に絵付けのテストを障がいのある人に試してもらうと、平面の絵を立体のろうそくに直接模写するのはなかなか難しいということがわかって、じゃあ平面と立体の2段階の下書きを工程に入れてみようと。「イラストレーター(絵を描くアプリケーション)」で図柄を再現して、トナープリントでろうそくに転写したんですが、これがハマりました。

下書きと補助具があることで作業に取り組める人がぐっと増えたんです。彼らはむしろひとつのことを続ける能力が高かったりするので、こういう細かな作業が得意なんですね。

絵付け体験会の様子

障がいのある人たちの能力を実感した「中村ローソク」では、なんと2017年4月から1名、障がい者を「絵付け師」として採用。作業を細分化して工程を整理すれば、障がい者が伝統工芸の担い手として活躍できることが証明されたのです。

新しい雇用の分野と障がい者福祉をつなげるチャレンジの機会をくださった京都市役所の方に本当に感謝です。この取り組みがさらに広がり、障がい者が跡継ぎになったり、ひとつの工芸品を福祉施設でつくれるようになったらいいなと思っています。

さらに中川さんは、江戸時代から人々に愛されてきた絞り染め「京鹿の子絞り」の技術をつなぐ「絞彩苑 種田」との連携もスタートしました。

福祉支援への関心が高いホテルの料理長協力のもとオリジナル・チョコレートを開発し、「京鹿の子絞り」に必要な絞り染めや糸くくりといった作業を障がい者が担当。染め上がった布でパッケージし、海外で販売していく予定です。

事例をつくり、福祉の世界を揺らしたい

福祉の世界に編集やビジネスの視点を持ち込み、常識の枠をひとつひとつ飛び越えながらチャレンジを続ける「GIVE & GIFT」ですが、中川さんは「難しいことは何もしていないんですよ」と笑います。

仕掛けはいろいろ考えているけれど、言ってしまえば、街中のカフェが福祉施設だというだけなんです。郊外で福祉施設がカフェをやっても驚きませんよね? でも、都会のカフェが福祉施設だというだけで、行政も、福祉も驚くんです。それって僕からすればかなり違和感を感じることで。

前例がないというだけなんです。郊外でやるのがセオリーだから。郊外の方が地域の人たちに協力してもらいやすいと思っていたりする。街でやる方が断然やりやすいことも多いのにです。

でも、経験がない人たちにはやっぱり理解されません。理解を促すのは体験。だからひたすら事例をつくって見せるしかないと思っていて、「GIVE & GIFT」も見学をしてもらい、いろいろな取り組みを間近で見てもらえる施設にしています。

一生懸命考えた仕組みを公開するなんて、一般企業で考えたらあり得ないですよね。でも、見学が多いと利用者さんもピリッとするし、持って帰ってもらって、真似してもらう方が長い視野で見たら福祉の世界にとっても絶対にいいなと思うので、そうしています。

3年が経ち、手探りのチャレンジが前例に変わってきた中で、少しずつ「街で福祉施設をやるのいいですね」「『GIVE & GIFT』のように取り組んでいきたい」という声も聞かれるようになってきたそう。

とはいえ、まだ3年しかやっていないペーペーです。何十年も障がい者福祉に関わってこられた大きな施設さんたちの貢献には遠く及びません。でも、僕らは僕らの規模で、できることをコツコツと積み上げて、福祉の世界を揺らしていきたい。

実験して、事例をつくって、つながりの可能性を伸ばし、地域資源を探ることがいかに大切かを伝え続けていきたい。福祉職員が変わることで福祉が明るいものになる未来をつくっていきたいと思っています。

私たちはなぜか、障がい者は助けが必要な存在であり、自分たちは助ける側だと思いがちです。しかし、この世界に存在するすべての生き物に役割があるように、彼ら・彼女らも活躍できる環境さえ整えば、共により良い未来をつくり出す強力なパートナーになり得るのだということを、中川さんは教えてくれているような気がしました。

興味を持たれた方はぜひ、「GIVE & GIFT」を訪ねてみてください。ユニークな赤いメガネをしたお兄さんと利用者さんたちが、笑顔であなたを出迎えてくれるはずです。ただしその際は、事前連絡をお忘れなく。

特集「マイプロSHOWCASE関西編」は、「関西をもっと元気に!」をテーマに、関西を拠点に活躍するソーシャルデザインの担い手を紹介していく、大阪ガスとの共同企画です。

暴行目撃証言の文書を“シュレッダー”指示

2017年10月06日 03時02分00秒 | 障害者の自立

 栃木県宇都宮市の障害者施設で、入所者が大けがをした事件で、元職員による暴行を隠ぺいしたとして逮捕された栃木県警OBの男が、暴行の目撃証言が書かれた文書をシュレッダーにかけるよう指示していたことがわかった。

 証拠隠滅の疑いで逮捕されたのは、宇都宮市で障害者施設を運営する社会福祉法人「瑞宝会」の幹部で、栃木県警OBの手塚通容疑者、斎藤博之容疑者、当時の施設長・斎藤健輔容疑者の3人。施設では今年4月、当時の職員・松本亜希子被告らが、入所者の男性を、40分近く殴る蹴るなどし、大けがをさせた罪で起訴されていた。

 手塚容疑者らは当時、内部調査を担当していたが、警察の調べによると、事件直後に暴行を目撃した職員が書いた報告書を処分した疑いがもたれている。処分を指示された施設の元職員は、日本テレビの取材に、手塚容疑者に指示されて報告書をシュレッダーにかけたと証言した。

 「4月18日ですね。手塚容疑者から電話いただいてメモと写真を処分するようにと指示がありました。その後すぐ、自分がメモをおそらくシュレッダーにかけて処分したという流れですね」

――証拠隠滅の指示という認識もあった?
 「そうですね、はい」

 警察は、3人の認否について「捜査に支障がある」として明らかにしていない。

2017年10月4日  日テレNEWS24


海津の放火・妹殺害、兄に懲役12年判決 岐阜地裁

2017年10月06日 02時57分20秒 | 障害者の自立

 岐阜県海津市で昨年3月、自宅などに放火し、同居していた知的障害者の妹の久美子さん=当時(56)=を殺害したとして、殺人や現住建造物等放火などの罪に問われた無職野村裕被告(59)の裁判員裁判で、岐阜地裁は4日、懲役12年(求刑懲役20年)の判決を言い渡した。

 菅原暁裁判官は判決理由で、経済的に困窮して自殺を考えた野村被告が、(障害がある)妹は自分なしでは生きていけないなどと十分な根拠もなく思い込み、殺害したと指摘。野村被告が積極的に就職活動をしなかったことなどを挙げて「無理心中を回避する努力を、長期間にわたってほとんど放棄していたと言わざるを得ない」とした。

 久美子さんとの関わりについては「障害のある妹の面倒を長年見てきたことに同情する部分もある」とする一方、自宅で就寝していた時間帯を見計らって放火したことに対し、「被害者に与えた苦痛も極めて大きかった」と指摘した。

 判決によると、野村被告は昨年3月7日朝、海津市海津町成戸の自宅と離れに放火し、自宅2階にいた久美子さんを殺害した。

(中日新聞)  2017年10月4日