新型コロナ緊急事態宣言が4月25日に「発出」されて5日間がすぎた。今のところ、公共交通機関の混雑は普段と変わらない。危機意識が共有されていないのではないか。いっぽうで、ワクチン接種の申し込みの受付がパンクの状態である。国民は分断されている。
私は、政府や自治体やメディア自体が、新型コロナはただの風邪、安全安心、それより経済だ、旅行だ、カラオケだという人と、重症になって苦しい思いをする、後遺症が残る、死ぬかもしれないという人に、分かれているからだと思う。人は、自分の思いに合致した見解を信じるものだ。そして、両極端に分かれた主張を頭から否定できない。したがって、新型コロナに関する科学的な見解については白黒はっきりさせたほうが良い。すなわち、ただの風邪と同じなのかどうかは、科学の問題だと思う。また、医療崩壊も現実に起きることである。
普通の風邪も高熱がでると苦しい。しかし、放置しても2,3日で自然と治る。咳が尾を引くぐらいである。しかし、現在、入院できず、自宅やホテルで療養している新型コロナの患者が、死にかけたり、死んだりしている。この重症化率は、普通の風邪より高いのか。それとも、絶対的感染者数が多いから、重症になる人の数が多く、医療を圧迫しているのか、統計的に分からないものだろうか。
重症化率が普通の風邪と同じくても、新型コロナの、特に変異株の感染力が強く、感染者数の急増が医療崩壊に導くものであれば、社会は危機意識をもつべきだと私は思う。
約百年前、スペイン風邪(インフルエンザ)のとき、若者の重症化率が高くて、大騒ぎになった。いま、新型コロナは、重症化率の高いのが老人だから、若者は感染予防に非協力的なのではないか、と疑う。
そうすると、責任ある立場のひとは、自粛疲れがわかるなんて言わないほうが良いと思う。迷惑だから、新型コロナの感染を広めるような行為はしてくれるな、と率直に言ったほうがよい。場合によっては、若者が重症になっても、人工呼吸器やECMO(エクモ)の優先度を下げるぞ、言った方がよい。
菅義偉は、4月25日緊急事態宣言に先立って、「人流」を抑える施策(自粛要請)を国民に謝罪したが、そんな必要はなかった。謝罪すべきは「GoToキャンペン」を行ったことや
変異株に関する監視体制の強化、
感染拡大の予兆をつかむための戦略的な検査の実施、
安全・迅速なワクチン接種、
次の感染拡大に備えた医療体制の強化、
を実行しなかったことである。
小池百合子のように、はっきりと「(爆発的感染地)の東京に来ないでください、東京から出ないでください」と菅に訴えて欲しかった。
政府が東京オリンピック・パラリンピックを行うとしているのも、現在の医療崩壊の状況と矛盾する。政府が、医療崩壊は起きていません、大量の医師や看護士をオリンピック・パラリンピック選手や関係者のために派遣します、と言っているようでは、国民に安心安全の幻想をふりまくことになる。
ワクチンを接種する医療従事者が足りないと言っているのに、オリンピックやパラリンピックに人をさくことが無理なのは明らかだろう。
ワクチン接種の裏付けのないスケジュールは、国民に安全安心の幻想をふりまいている。私がNPOで指導している二十歳過ぎの若者は、夏前にワクチン接種が終わって、家族旅行ができると思いこんでいた。私が顔色を変えて否定したら、ウソつきと言われた。
新型コロナをめぐる国民の分断は、菅義偉の危機意識のなさによると私は思う。