猫じじいのブログ

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5月16日現在イスラエルとパレスチナの衝突が拡大している

2021-05-16 22:43:34 | ガザ戦争・パレスチナ問題
左図の黄色がイスラエル国、緑がイスラエルの占領地(パレスチナ自治区)
 
ロイター通信によると、イスラエルによる空爆で、この1週間で、パレスチナのガザの死者は181人となった。ガザからのロケット弾でイスラエル側で10人が死亡した。
 
ガザとはパレスチナ人の地中海側の自治区である。マンガ『進撃の巨人』のように高い壁に囲まれたなかに180万人が住んでいる。人口密度は1km平方あたり5千人である。『進撃の巨人』と違い、壁を作ったのはイスラエル側である。普段は壁に設けられた検問所を通ってイスラエルの工場に働きに出る。
 
パレスチナ人とは、もともと、イスラエルの地に住んでいたアラブ人のことである。1948年、ユダヤ人がパレスチナの地に、イスラエル国の建設を宣言し、武力で、アラブ人をガザ地域とヨルダン川西岸に追い払った。
 
ヨルダン川西岸も高い壁に囲まれているが、近年、イスラエル人が入植してきて、パレスチナ人の土地を奪うようになっている。今回の衝突も、イスラエル側がパレスチナ人の立ち退きを迫ることから、発生した。
 
パレスチナ人が181人殺されたのに対し、イスラエル人が10人殺された。軍事的に圧倒的な差があり、イスラエル政府は、壁の中のパレスチナ人全員をいつでも殺せる。イスラエル側はいつでも空爆したり、地上軍を派遣できるが、パレスチナ人にはそれを阻止する力がないのである。飛行機も高射砲も戦車もないのである。イスラエル側がパレスチナ人全員を殺さないのは、国際的な世論があるからである。
 
実は、ビル・クリントンが大統領のとき、パレスチナ人とイスラエル人が和解する希望が見えたのである。1993年9月13日、クリントン大統領のもとワシントンで、イスラエルとPLO(パレスチナ解放戦線)とが、パレスチナ人の暫定自治の宣言に調印した。1994年、PLOのアラファト議長とイスラエルのラビン首相、ペレス外相がノーベル平和賞を受賞した。
 
残念ながら、イスラエルのラビン首相はテルアビブにおいてユダヤ民族至上主義者に射殺され、事態は和平と反対方向に進み、今日にいたっている。ラビン首相は労働党であり、PLOも社会主義だった。イスラエルの政権は民族主義のリクード党にとって代わられ、パレスチナ自治政府もイスラム原理主義ハマスにとって代わられ、和平が見えなくなった。
 
もちろん、イスラエル国民は強硬派だけではない。
3月のイスラエル総選挙ではネタニヤフ首相のリクード党は獲得できず、連立工作もうまくいっていない。この結果、強い首相を演じるため、ネタニヤフはパレスチナ人に対してより強硬な立場をとるようになっている。
また、2000年から、イスラエルのユダヤ人人口が減少に転じているのは、イスラエル政権の武力による解決に嫌気をおぼえて、海外脱出する人が後を絶たないからだ、と思う。
 
アメリカのバイデン大統領は、きのう、イスラエルのネタニヤフ首相と、パレスチナ自治政府のアッバス議長(選挙で選ばれている自治区の大統領)にそれぞれ電話で停戦を呼び掛けた。ところが、がっかりしたことに、バイデン大統領は、対等な扱いをしなかったのである。以下はNHKやTBSのニュースをまとめたものである。
 
《ホワイトハウスによると、バイデン氏はアッバス氏やネタニヤフ氏に対し「2国家共存」を支持する考えを伝え、戦闘で子供を含む民間人が犠牲になっている状況を指摘した。
一方、ネタニヤフ氏には、イスラエルの自衛権への支持を改めて伝達するした。
アッパス氏には、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるロケット弾発射については停止する必要があるとの認識を強調した。》
 
181人を殺したイスラエルの自衛権を支持し、10人を殺したパレスチナにロケット弾発射停止を呼びかけるのは、公平な仲介者とはいえない。バイデン大統領は、アメリカ国内の福音派を意識して、イスラエルに腰が引けている、と思う。