猫じじいのブログ

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きょうの朝日新聞『何のための五輪』の猪瀬直樹の発言が腹立たしい

2021-05-22 23:16:26 | 社会時評


きょうの朝日新聞『(耕論)何のための五輪』に、元都知事の猪瀬直樹がインタビューに応じていた。一読して、あまりにもいい加減で、人を愚弄することを言っているのに、とても腹がたった。

《五輪の開催への支持率は気分で動くものです。》
《今は賛否が割れていますが、五輪が始まると選手のドラマが感動をもたらすでしょう。》
《日本がこの状況下で東京五輪を開催できれば、コロナと戦っている世界中の人々に勇気を与えるでしょう。》
《それに、もし日本が開催できないとなったとしても、中国は来年の北京冬季五輪を必ずやります。》
《五輪が過度な商業主義に走っているとして、「だからやめられない」などと批判するのは、そもそも間違っています。五輪はビジネスそのもので、スポーツ産業です。お金が動かなければ、選手も生活できない。》

猪瀬は、石原慎太郎が都知事のときの副知事である。2012年、石原が日本維新の会に乞われて、都知事を辞職し、国政選挙に立候補したため、後継者として、急遽、猪瀬が、都知事に立候補し、12月16日の選挙で当選したのである。

東京が五輪を招聘することは、石原都知事が決断したことである。一言で言えば、オリンピックをやるということで、選挙に勝てると思ったからである。ビジネスをやっている連中が金儲けができると思い、積極的に支持してくれると思ったからである。自民党の岩盤層をそれで固めれば、そのまわりも、つられてほいほいとついて来ると思ったのである。

これが、猪瀬の「五輪の開催への支持率は気分で動く」という傲慢な発言に結びついているのだ。

猪瀬の「五輪はビジネスそのもの」も、金儲けだと考えからでてくる。ところで、元大統領のトランプがいう「ビジネス」は「金もうけ」ではなく、「デール(取引)」という意味で使っている。ビジネスは、古い既得権者から自由になって、各個人が取引するという意味であり、双方の合意にもとづく行為である。

したがって、金儲けという意味での「五輪はビジネスそのもの」は猪瀬固有の人生観である。

元首相の安倍晋三は、猪瀬とタグを組んで、積極的に東京五輪を招聘した。東日本大震災で起きた福島第1原発の事故後の放射能汚染水の大量発生の中で、福島の汚染水は「アンダーコントロール」だから、安全だと海外に向かって発信したのである。

彼は、『新しい国へ―美しい国へ 完全版』(文春新書)の「第3章 ナショナリズムとはなにか」で、2004年のアテネオリンピックで優勝した柴田亜衣選手が「金メダルを首にかけて、日の丸があがって、『君が代』が流れたら、もうダメでした」と大粒の涙を落した、と紹介している。

すなわち、安倍は、東京オリンピックは、経済だけでなく、ナショナリズムの高揚に寄与すると考え、自民党政治を安定させるために、利用したのである。

この感覚は猪瀬も共有している。だからこそ、日本が中止しても「中国は来年の北京冬季五輪を必ずやります」という発言になったのである。べつに開催を中国と競争するようなことではない。

猪瀬は「コロナと戦っている世界中の人々に勇気を与えるでしょう」というが、コロナ禍に家でのんびりとテレビを見ている人に「感動」を与えても、「コロナと戦って」いる人にとっては、わざわざ感染を広げる行為に腹立たしい思いをするだけである

ところで、ウィキペデアによれば、猪瀬が学生時代、中核派で、信州大学全共闘議長だったという。この経験も、「五輪の開催への支持率は気分で動く」という人をバカにした発言に結びついているのだろう。猪瀬のような男を政治の舞台に立たせた人々は、少し反省して欲しい。