猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

アメリカ大統領たる者が福音派に左右されてイスラエルに肩入れするな

2021-05-17 23:42:52 | ガザ戦争・パレスチナ問題
 
きょうも、パレスチナとイスラエルの衝突が続いている。衝突というより、圧倒的にイスラエル軍のほうが強く、世界の世論を見ながら、壁の中のパレスチナ人をどれだけ殺そうか思案している。テレビでは、192人のパレスチナ人が殺され、50人以上が子供だという。
 
宗教的な争いではなく、土地あらそいである。ユダヤ人の一派は、イギリスより、その占領地、パレスチナの地をもらう約束を、第2次世界大戦時のイギリスへの経済的支援の見返りにもらった。これを、根拠に、1948年に、ユダヤ人は、パレスチナに住むアラブ人を武力で追い払って、イスラエル国を建設したのである。
 
イスラエル建国は、いっぽう、旧約聖書(ヘブライ語聖書)の中のモーセの五書ならびに『ヨシュア記』のなかで、神がイスラエル12部族にカナンの地を約束したという神話にもとづいている。ヘブライ語聖書がキリスト教の聖書の半分を占めることが事態を複雑にしている。
 
前の大統領トランプが、親イスラエルよりの立場をとり、アメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移動し、世界に先駆けて、エレサレムをイスラエルの首都と承認した。そればかりか、イスラエルがヨルダン川西岸の占領地域に入植し、パレスチナ人を追い払うのを支持した。
 
トランプの親イスラエルよりの行動は、アメリカ国内の福音派の支持を固めるためだ、と言われている。今回、私がびっくりしたのは、パレスチナとイスラエルとの停戦を呼び掛けるバイデン大統領が、電話で、イスラエルの肩をもつような態度をとったことである。イスラエルは明らかな強者であるから、アメリカは、パレスチナに人道上の配慮をみせ、イスラエルをいさめるかたちをとることで、和平の仲介者たることができるのに。
 
ユダヤ人は、いまのイスラエルの南半分にあった、約3000年前の小さなユダ国の末裔である。建国にあたって、ヘブライ語聖書から、イスラエルという国名をとったのは、神の約束ということを前面にだすために、大きく出たわけである。そして、2000年前には、ユダヤ人がヘブライ語を話さなくなって、周りのセム語系の人たちと同じ、アラム語を話すようになった。にもかかわらず、1948年のイスラエル建国ともに、ヘブライ語を母国語にし、ヘブライ語聖書によって、国民の一体感を高めようとした。
 
それでは、モーセの五書やヨシュア記とはなにか。私は、国を失ったユダヤ人が1つの民族としての意識を維持するために、祭司たちが書いた偽書である、と思う。ユダ王国が滅びてバビロンに捕囚となる前には、それらの書は、ほとんどなにもなかった。捕囚期、捕囚後のエルサレムへの帰還後に書き続けられ、捕囚後300年して、完成した物語である。エルサレムの地への帰還の物語が、神に導かれてのカナンの地獲得の物語に変わったと考えられる。
 
現在のイスラエル国民の多数派は、ヘブライ語聖書を歴史的事実だと考えていないと思う。20世紀の初めから、多くの歴史学者は、モーセに率いられたイスラエル人のエジプト脱出が歴史的事実ではなく、また、モーセも実在しなかったと主張するようになっている。
 
アメリカの福音派というのは、私は、よくわからない。福音派という統一した団体があるのではなく、漠然としたキリスト教の信仰の1つのありかたように、思える。竜巻、洪水、雨、吹雪、争いが起こって、大地がうめき、キリストが再臨(携挙)して神の統治する世界がくると信じるのである。そのためには、ユダヤ人がエルサレムにイスラエル国を再建することが必要である。
 
私は、そんなことが聖書のどこにも書いてないと思うが、そう信じて日々暮らしている人びとがアメリカにいると、アメリカの政治家が思っているのである。
 
しかし、アメリカの大統領たる者は、そのような思い込みに影響されて、強い者が弱い者を殺すのを自衛権だと言うのは、間違っている。