先月末、故郷新潟へと帰省してきた。相模原愛川インターから圏央道、関越道を経て二度の休憩を取って六日町インターで降り、峠の県道をぬけて行く。今春の山里はすっかり雪解けして、遠くの長野県境の山襞に残る残雪のみで、いつになく青々としてそびえ立っていたように思う。
途中、松代を通り抜ける時に、ほくほく線の鉄路の向こうに巨大なクモ虫の様な特徴ある白い外観をした「まつだい農耕文化センター」と、その先の棚田の中で作業をする農夫姿を模した青と黄色のモニュメント像が望めて、ああ故郷の近くに帰ってきたんだ、という実感がわいてくる。まだ日が残る明るいうちに、実家まで帰り着くことができた。玄関と縁側の雪解け用の羽目板を外して、ひとまず荷物を家の中に運び込んだ。半年のあいだ無人だった居間に入り、縁側のカーテンとサッシを開けて、明りと外気を呼び込むことにする。そうしてようやく、人の気配の中で家が呼吸をしはじめた。
この日の夕方は、車で半時間ほどの地元日帰り湯に行くことにした。霧ケ岳温泉「ゆあみ」という名のそこは、2005年の市町村合併前にできた当時の村おこしブームで誕生した日帰り鉱泉施設。建物は目を洗うような緑の山々に囲まれ、保倉川のせせらぎに隣接している立地がまずもっていい。トタン屋根田舎家風の鄙びた、というか都会人の目を意識したようなことのない普通の雰囲気が救いで、じつに肩の凝らないのんびりした鉱泉だ。いつ行っても閑古鳥が鳴いている感があって、はたしていつまで持つのだろうと気になっていたが、とうとう来年三月をもって休館なのだという。ここの魅力ある環境は、なかなか捨てがたく、いやあ、もったいない気がするなあ。大広間、サウナ、キャンプ場あり、バーベキューガーデンあり、コシヒカリアイス店舗の併設されたドライブイン要素も兼ね備えているのに、周囲に対して十分にそれがアピールできていないもどかしさ、あっさりしすぎの欲の無さを感じるのだ。
あたりの景色を眺めながら湯船につかり、そうかこの春から秋が見納め、いや湯納めになってしまうのだろうと思うと、なおさら愛おしさが増してくるし、やわらかな新緑がいっそう身に染みる。ちょうど広場の八重桜が満開で、こんどは昼間にゆっくりと来てみようと思う。
第三セクター鉄道ほくほく線うらがわら駅。静かなローカル線だが、昨年まで越後湯沢発金沢行きの特急「はくたか」が疾走していた。題字は開業十周年を記念して、どのような繋がりだったのか、あの片岡鶴太郎氏による。田舎風民家を模した待合室、積雪を意識した高架の駅舎はエレベータつき。この先に行くと曹洞宗の名刹、顕聖寺。境内には、明治時代日韓併合の影の立役者、快僧武田範之顕彰碑がたつ。
翌日午前中は、近くの裏山でいまが旬の筍掘り作業にいそしむ。タケノコって、竹冠に“旬”と書くのかと気がついて、山斜面に先端をちょこっとだけ出したところを発見、やはり、いまが旬なんだと実感した。このタケノコ、根元まで掘りやすかったこともあり、慎重にシャベルで掘り出したら、最終的に予定した倍の本数の新鮮な収穫物があった。さっそく持ち帰って庭の苔の上に並べて、記念撮影と相成った。考えてみるに、田舎で暮らしていた時は、このような行為に喜びを感じることも意識しないままで、都会に出て戻ってきて、ようやく改めて感じ入ったわけで、不思議なものだ。
庭の杉苔のうえの掘りたて、旬のタケノコ。孟宗竹につき、根元まで毛深い!?
途中、松代を通り抜ける時に、ほくほく線の鉄路の向こうに巨大なクモ虫の様な特徴ある白い外観をした「まつだい農耕文化センター」と、その先の棚田の中で作業をする農夫姿を模した青と黄色のモニュメント像が望めて、ああ故郷の近くに帰ってきたんだ、という実感がわいてくる。まだ日が残る明るいうちに、実家まで帰り着くことができた。玄関と縁側の雪解け用の羽目板を外して、ひとまず荷物を家の中に運び込んだ。半年のあいだ無人だった居間に入り、縁側のカーテンとサッシを開けて、明りと外気を呼び込むことにする。そうしてようやく、人の気配の中で家が呼吸をしはじめた。
この日の夕方は、車で半時間ほどの地元日帰り湯に行くことにした。霧ケ岳温泉「ゆあみ」という名のそこは、2005年の市町村合併前にできた当時の村おこしブームで誕生した日帰り鉱泉施設。建物は目を洗うような緑の山々に囲まれ、保倉川のせせらぎに隣接している立地がまずもっていい。トタン屋根田舎家風の鄙びた、というか都会人の目を意識したようなことのない普通の雰囲気が救いで、じつに肩の凝らないのんびりした鉱泉だ。いつ行っても閑古鳥が鳴いている感があって、はたしていつまで持つのだろうと気になっていたが、とうとう来年三月をもって休館なのだという。ここの魅力ある環境は、なかなか捨てがたく、いやあ、もったいない気がするなあ。大広間、サウナ、キャンプ場あり、バーベキューガーデンあり、コシヒカリアイス店舗の併設されたドライブイン要素も兼ね備えているのに、周囲に対して十分にそれがアピールできていないもどかしさ、あっさりしすぎの欲の無さを感じるのだ。
あたりの景色を眺めながら湯船につかり、そうかこの春から秋が見納め、いや湯納めになってしまうのだろうと思うと、なおさら愛おしさが増してくるし、やわらかな新緑がいっそう身に染みる。ちょうど広場の八重桜が満開で、こんどは昼間にゆっくりと来てみようと思う。
第三セクター鉄道ほくほく線うらがわら駅。静かなローカル線だが、昨年まで越後湯沢発金沢行きの特急「はくたか」が疾走していた。題字は開業十周年を記念して、どのような繋がりだったのか、あの片岡鶴太郎氏による。田舎風民家を模した待合室、積雪を意識した高架の駅舎はエレベータつき。この先に行くと曹洞宗の名刹、顕聖寺。境内には、明治時代日韓併合の影の立役者、快僧武田範之顕彰碑がたつ。
翌日午前中は、近くの裏山でいまが旬の筍掘り作業にいそしむ。タケノコって、竹冠に“旬”と書くのかと気がついて、山斜面に先端をちょこっとだけ出したところを発見、やはり、いまが旬なんだと実感した。このタケノコ、根元まで掘りやすかったこともあり、慎重にシャベルで掘り出したら、最終的に予定した倍の本数の新鮮な収穫物があった。さっそく持ち帰って庭の苔の上に並べて、記念撮影と相成った。考えてみるに、田舎で暮らしていた時は、このような行為に喜びを感じることも意識しないままで、都会に出て戻ってきて、ようやく改めて感じ入ったわけで、不思議なものだ。
庭の杉苔のうえの掘りたて、旬のタケノコ。孟宗竹につき、根元まで毛深い!?