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まほろ界隈逍遥生々流転日乗記

まほろからの情景 その弐 骨董市とシティゲート

2016年09月04日 | 建築
 九月になって最初の夜に、晴れて星はみえるけれども月はどこに?と思って天文暦を確かめたら、その夜は長月に入って最初の新月、どうりでね。台風が過ぎて、すこし蒸し暑さが戻ってきた静かな夜中、中庭からは秋の気配を知らせる虫の音が聞こえてくる。
 秋の気配と言えば、昼間にお隣の敷地の柿の木をなにげなく見上げたら、ふくらんできた柿の実のそのいくつかはほんのりと色づいているのに初めて気がついた。これが次第に数が増えて、色づきが増してくると、ああ秋だなあって思う。

 朝、すこし早起きをして毎月一日に開かれる、まほろ天満宮の骨董市に行ってみた。まだ七時前、そぞろ開店準備中の境内では、店主が思い思いに売り物の品々を拡げ始めている。アンティークな小物、装身具、掛け軸、陶器、鉱物、着物に帯、ガラクタのような?古道具、そのほかいろいろ、それぞれの店主の風貌も骨董品のように味わい深いのが面白い。まだ、買い方が分からなくて、眺めて歩き回り雰囲気を楽しむだけ、そのうちに気に入ったものがあれば買ってみたいものだと思う。糸魚川産の翡翠ヒスイ、型染めの帯布など気になるもののいくつかがあったけれど、いまはまだ手に取ってみただけでいい。もうすこし、時間と経験を重ねることで、自然とのぞむものに出逢えることになるだろうから。

 ケヤキ並木が両側に残るかつての行幸道路の帰結点である駅駐車に戻って、連絡通路に続く改札横のカフェでひと休み。その前のデッキを通勤や通学にむかう人が足早に歩いていく。デッキのさきに巨大なステンレス製モニュメント「シティ・ゲート」がそびえ立っている。そのもうすこし先にいけば、さきの骨董市のひらかれている神社のJR線を横断している参宮橋にいたる。まほろの都市風景のひとつで制作1983年10月と銘板に記されている。どうしてこんなところに当時の花形建築家黒川紀章?という感じだが、駅前再開発計画とランドスケープデザインに関わったコンサルティング会社、RIAとのつながりかもしれない。

 「シティ・ゲート」のデッキの下は、町田街道からやがて東名高速道路の横浜町田ICにつながるから、あながちその名称はだてではなくて事実をそのままあらわしている。ことしの秋で完成から33周年、そのときにはあまり話題にもならなかった気がするけれど、いつのまにか気がつけばすっかり周りの情景になじんでしまった。もし、まほろ市民方面が東名高速経由で名古屋・御殿方面から街の中心に近づいてきたときには、このゲートの姿を確かめることで返ってきた実感と安堵感を覚えるのだろう。

 ここからの眺めは、80年代以降の移り変わりの風景が映し出された円錐形ステンレスモニュメントに象徴される郊外都市のなりたちの多様な“貌(かお)”のひとつに違いない。
 

 駅前改札横の早朝カフェから。
 店内の深みのある黄色ランプと窓ガラスの向こうのシティゲートのアーチが都会のような風景。
最近できた新築高層マンションは、もともとダイエーの関東進出第一号店舗跡で現在も二階にテナントとして入居している。


 シティゲート(制作者は建築家の黒川紀章)はぴったり南北方向に架かる。むかって左が北、右が南方向。
 ステンレスアーチに周囲の風景を映しこんで、郊外都市の鏡となっている。ランドスケープデザインとしてとらえれば、愛知の豊田大橋とコンセプトは一緒だろう。


 そのすぐ近くにある、あきらかに万能薬タイガーバームの商標をもじった中華料理店の看板。じつに目立つし、愉快で秀逸でもある。奥のビル屋上には、まほろが背伸びして掲げた、ニューヨークにあるみたいなロックライブハウスのサイン。
 このビルは、映画「まほろ駅前狂騒曲」の主人公たちの営む「便利屋事務所」の設定で実施のロケ撮影に屋上部分がつかわれた。ビルの横丁を入れば、「さくら小道」と名づけられた黒塗り塀の粋な木造店舗が連なるかとおもうと、にぎやかなタイ料理屋があったりする、おもしろい一角となっている。
(20216.09.01書始め、09.04 初校了)