Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」

ダンディー爺さんを目指して 日々を生き抜く
ダンジーブログ

それぞれの歴史 そして想い

2008-05-03 | 想い・雑感
進行胃癌が見つかった60代男性
外来で初めてお会いしたときから
説明を聞いてもあまり動じる風がない
奥様と共に淡々としている

腫瘍マーカーがかなり高値を示していることや
リンパ節がかなり腫れていることなどから
かなり厳しい状況であることまでお話しした

そして術後抗癌剤治療が必要であることもお話しした
すると娘さんのことを話し始められた

2年前に白血病に対する闘病の末に
旅だった娘さん
2回の骨髄移植と厳しい抗癌剤治療に耐え抜いたが
病勢を抑えきることができなかった

治療の苦しみ
死への恐怖
それらに堪え忍ぶ娘の姿を想い出せば
自分が癌と言われたからといって
動揺するのは恥ずかしいし
不思議なくらい気持ちは落ち着いている
なるようになると腹をくくっているとのこと

両親 夫 子供などに残した小さなノートの最後に
それまでのきちっとした字に比べると
少し乱れた字で
「誰も 恨まないで」
と書かれていたという

どのような気持ちで書いたのだろうか
そしてそれは自分自身に それとも家族へ向けて 書かれたのだろうか



割り切れば
娘さんのことと胃癌の治療とは関係ない
実際に治療に当たってはそういうスタンスが必要である

でも医療としては
ご本人の あるいは家族の
様々な思いも感じ取りながら
患者さんと接していく
そのような自分でありたいと思う

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