Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」

ダンディー爺さんを目指して 日々を生き抜く
ダンジーブログ

治療法の選択・人生の選択

2006-10-12 | 医療・病気・いのち
 約1年半前に、食道と胃に癌があると診断されたものの、癌に対する治療を何も受けていない方が外来にやってきた。

 最初診断を受けたときは、手術を受けようと大学病院を紹介してもらったそうである。しかし、状況から12時間近く手術がかかる可能性があること。そのような大手術をしても再発の可能性は高いこと。再発するのであれば1年くらいで再発する可能性があること。などを説明され、ご本人「それなら一年間後悔せんように遊んじゃれ。」と決断したそうである。手術だけでなく、抗癌剤治療も放射線治療もせず、大きめの車を購入し、1年間いろいろなところを巡ったそうである。

 そんな方に、少し痛みが出てきた。痛いのはいやだと近隣のホスピスの門をたたき、痛み止め(まだ第一段階)を処方してもらいまた元気にしていた。ところが癌自体で命を失う前に、いきなり食事がのどを通らなくなり、水分も飲み込めなくなってきた。それも良しと最初は思ったそうだが、やはり餓死するのもいやだと、栄養補給方法を検討するために紹介されてきたわけである。

 「一年間のいろいろな旅行は楽しかったですか。」と尋ねると、破顔一笑、「いやあー、楽しかったねえ。」

 この方にとっては、人生の正しい選択だったのかもしれない。

 来院の目的は、高カロリー輸液用のポートを埋め込むことだったが、口から栄養を取る可能性求めて、食道ステントを入れる目的で近く入院していただくこととした。ポートを埋め込むのは、それからでも遅くない。

 出来ることならまた少しでも食事をしながら、残る人生を味わって頂きたい。しばらくの間、私もじゃまにならない程度に、お付き合いさせて頂こうと思う。

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