昨年9月以来となる『太陽にほえろ!』レビューは、原昌之=ジプシー刑事(三田村邦彦)の登場編(#495)から1話挟んでのジプシー活躍編。
ただし実質の主人公は最若手のラガー刑事(渡辺 徹)で、京都で撮ってる『必殺仕事人』シリーズとの掛け持ち出演で忙しすぎる三田村さんは、ほぼ前半しか活躍しません。
が、熱血漢のラガーと組むことでジプシーのクールさが際立つし、さりげなく後輩をサポートする彼の優しさも垣間見える好編となりました。
ちょっと早すぎるんですけどね、優しさを見せるのが。登場編であれだけニヒル&クレイジーな一匹狼ぶりを見せつけてから、わずか2話目ですから。
今でこそテレビ業界における”大人の事情“ってヤツが想像できるけど、リアルタイムで観たときはズッコケましたよ。誰よりもズッコケたのは三田村邦彦さんかも知れないけどw
☆第496話『ジプシーとラガー』
(1982.2.19.OA/脚本=小川 英&尾西兼一/監督=鈴木一平)
4年前に現金輸送車を襲って九千万円を奪った二人組のうち、1人だけ捕まった木谷(吉永 慶)が刑期を終えて出所します。
木谷が見知らぬ男の誘いに乗って強盗に加担したのは、妻の郁代(高尾美有紀)が交通事故を起こして一億円以上の賠償責任を負い、切羽詰まってたから。
なのに金を主犯者に独り占めされた挙げ句、自分だけが捕まっちゃった木谷に、ラガーは「お人好しでドジなやつ」と同情するんだけど、ジプシーは「主犯に復讐するつもりじゃないか」と懐疑的。
いずれにせよ木谷が主犯者と接触する可能性が高いと睨んだボス(石原裕次郎)は、ジプシーとラガーに木谷をマークするよう命じます。
この時点における二人の距離感は、こんな感じ。
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で、ギクシャクしつつも調べてみると、木谷が事件後すぐに離婚していたことが判明。
それは愛する郁代を世間に「犯罪者の妻」呼ばわりさせない為の優しさだと主張するラガーと、「(郁代が背負った)借金と縁を切る為に別れたんだ」と切り捨てるジプシー。
「木谷がそんな計算高い男だとは、ボクには思えません!」
「どう思おうと、それはキミの自由だ」
あくまで性善説を信じる熱血漢ラガーと……
今のところは登場編で見せたニヒルさをキープしてるジプシー。
なんにせよ男前すぎるコンビです。しかも揃って身長180cmクラスだから目立ってしょうがないw
そのせいか尾行はバレてしまい、ジプシーが署に“定時連絡”してるスキにラガーが襲撃され、木谷は行方をくらませちゃう。
やはり木谷は、ジプシーが言った通りの冷血漢なのか?
この辺りの展開で私は「あれ?」って思いました。かつてのスコッチ(沖 雅也)を凌ぐほどのロンリーウルフと謳われ、実際に登場編でさんざんスタンドプレーを見せつけたジプシー刑事が、律儀に定時連絡? しかもそのスキに容疑者を取り逃すって……
それはともかく捜査が進み、4年前に木谷を巻き込んだ主犯者が、南郷という金融会社の社長らしいと判るんだけど、その南郷の所有する自動車が爆発炎上し、運転席から木谷と思わしき焼死体が発見されるのでした。
車のオーナーである南郷も行方をくらませており、木谷を事故に見せかけて(口封じに)殺したと見て間違いなさそう。やっぱり木谷は、ラガーが想像した通りの「お人好しでドジなやつ」だった?
ところがジプシーのニヒルな捜査により、焼死体が南郷である可能性も浮上! それどころか、発見された証拠はジプシー説を裏づけるものばかり。
↑というワケでドック刑事(神田正輝)も加えた三田村・渡辺・神田の「ミワカントリオ」揃い踏み。3人とも文句のつけようがないハンサムぶりで、そりゃ当時のアイドルブームにおける人気沸騰も頷けます。それが沈みかけの太陽を押し上げてくれたんだから、ホントに感謝しかありません!
さて、主犯者の南郷が殺され、現金も消えたとなると、さすがのラガーも木谷=善人説を撤回するしかありません。
「間違いないって思ったんだけどなあ……」
「だったらなぜ、その説を捨てる?」
「でも、原さん」
「一度信じたことは、オレは叩きのめされるまで捨てない。それが出来ないんだったら、オレは初めから信じない」
「ムチャ言わないで下さい! これだけ逆の証拠が出揃ったら、どうしょうもないじゃないですか! もう、叩きのめされたのと同じじゃないですか!?」
「…………」
「違うって言うんですか? こうなってもまだ、死体はやっぱり木谷だったっていう可能性が、あるって言うんですか?」
「…………」
「そうかなあ……ま、いいや。どうせだから、もう一度信じてみよう!」
うっすらと微笑むジプシー。いい人ですw いや、いい人じゃないとダメなのは分かってるけど、それを見せるのが「早すぎる」んです。しつこいようだけど。
そんなジプシーのお陰で発奮したラガーは気づきます。証拠なんか、その気になれば捏造できる!と。
正解でした。ドック&ロッキー(木之元 亮)の協力を得て、ジプシーが京都で裏稼業してる間に証拠を徹底的に洗い直したラガーは、あの焼死体が“お人好しでドジな木谷”であることを見事に証明!
慌てて戻ってきたジプシーと共闘し、とんでもない悪人としか言いようのない南郷をカンザシで抹殺はせず、逮捕するのでした。
「原さん。オレは原さんの一言で考え直したんです。だから手錠は原さんが」
「オレに妙な気兼ねはやめるんだ。初めから推理の筋道は2つあった。キミの選んだ方が正しかった。それだけのことだ」
ナイスガイですw それでいいんです。いいんだけど、ただ、早すぎる! 何度でも言います。
今にして思えば、かつてスコッチが初登場した頃の『太陽にほえろ!』は人気絶頂期=無敵状態だったけど、そのあと存続の危機を経て、やっと盛り返してきたばかりの『太陽〜』にはきっと、何ヶ月もかけてキャラクターを掘り下げるだけの余裕が無かった。
つまり、ジプシー刑事が本当はナイスガイであることを早めにアピールし、視聴者離れを防ぐ必要があった。
だったら最初からそうすりゃ良かったじゃん!って話だけど、一方では「スコッチが抜けた穴(つまりロンリーウルフ枠)を埋めないと!」っていう焦りもあり、2つの思惑が錯綜した結果、わずか2週でこの笑顔……だったのかも知れません。
リアルタイムで観たときはギャップに戸惑うばかりだったけど、登場編を無かったことにして観直すと、これは地味ながら良いエピソードだと今は思います。
セクシーショットは、スナックのママ=かおる役でゲスト出演された、山科ゆりさん。日活ロマンポルノと並行して特撮ヒーロードラマ(トシさん=地井武男さんも出てた『電撃!! ストラダ5』)にもヒロイン役でレギュラー出演された、唯一無二の女優さん。
刑事ドラマにも『特別機動捜査隊』『特捜最前線』『大空港』『西部警察』『西部警察PART II』『新・女捜査官』など数多くゲスト出演されてます。
もちろん、後期『太陽にほえろ!』ライター陣の中心的存在だった尾西さんが、よくやっておられないワケがなく、はるか雲の上のお方です。
が、視聴する側にも千差万別の好みがありますから、人によって合う合わないの相性はあるかと思います。私はいまいち合わなかった気がします。