2017年の秋シーズン、なかなか気合いの入った刑事ドラマが登場しました。フジテレビ系列の木曜夜10時「木曜劇場」枠で全10話が放映された番組で、井浦秀夫さんの人気コミックが原作になってます。
世間の価値観に左右されない天才偏屈刑事=弓神適当(ゆがみ ゆきまさ)に扮するのは、民放の連ドラ初主演となる浅野忠信。
そして正義感は強いが出世欲も強い若手刑事=羽生虎夫(童貞)に神木隆之介が扮し、全く息が合ってないようで合ってる不思議な凸凹コンビで事件を解決していきます。
二人が所属する「うきよ警察署刑事課強行犯係」の係長に稲森いずみ、同僚刑事に仁科 貴、橋本 淳、そして弓神の裏バディとも言える敏腕ハッカー「ヒズミ」に山本美月、といったレギュラーキャスト陣。
さらに第1話ゲストが杉咲 花、岡田義徳、大後寿々花、小倉優子、小倉優香。第2話ゲストが水野美紀、斎藤 工と、まずキャスティングがやたら豪華です。
そして練り込まれたストーリーは一筋縄じゃいかないし、映画的な映像や編集がとてもスタイリッシュで、センスを感じました。
キャラクターも魅力的で、飄々としていつもフザケてて、名前の通りテキトーに仕事してるようにしか見えないのに、実は刑事コロンボ顔負けの鋭い洞察力と推理力を持つ弓神適当は、マンガ原作なのにまるで浅野忠信さんに合わせて創造されたみたいな人物。おとり捜査、不法侵入、ハッキング等々、違法捜査も厭わないどころか、ほとんど違法な事しかしない外道ぶりもサイコーですw
そんな弓神に振り回されながら、容赦ないツッコミを入れて対等に渡り合う、相棒の羽生虎夫もなかなかの曲者。このコンビに、私は山さん(露口 茂)&マカロニ(萩原健一)コンビの面影を見ましたw
(以下、ネタバレになります)
捜査過程の中で羽生が偶然再会した、杉咲花ちゃん扮する幼なじみの可憐な同級生。捜査に協力してくれて、恋も芽生えそうになったのに、実は彼女が真犯人だった!っていう第1話の展開は、あまりに『太陽にほえろ!』的すぎて昨今の刑事ドラマじゃ避けられて来た、昭和の王道パターンです。
しかも、傷心の羽生にあえて手錠を掛けさせ、刑事としての成長を促す弓神は、まさに21世紀の山さんだと私は思いました。
謎解きに終始するんじゃなくて、幼なじみの花ちゃんの熱心な仕事ぶりや、弓神のお節介もあって彼女に惹かれていく、羽生の心情、言わば青春模様が丁寧に描かれてるからこそ、切ないラストシーンがちゃんと活きてくる。
つまり、謎解きやトリックに合わせてキャラクターが創られる昨今の刑事ドラマ群よりも、キャラクターの成長こそを最優先に描いた『太陽にほえろ!』にずっと近いドラマ創りだと、私は感じました。
まるでフィルムで撮ったような映像の質感からしても、創り手にそういう意識があるような気がしてなりません。なにげに神木くんはよく走るし、浅野さんの外道ぶりにも昭和の匂いがプンプンしますw 彼が拳銃を持ったら一体どうなるんだろう?w
上っ面だけ昭和テイストだった前期の探偵ドラマと違って、この『刑事ゆがみ』には本物の昭和スピリットを私は感じました。
☆#02~#06
第6話は射撃訓練のシーンからスタートしたもんで、いよいよ『刑事ゆがみ』にも拳銃が登場!?って思ったのも束の間、本筋には拳銃のけの字も出ませんでしたw このドラマはそれで良いのだと思います。
とは言え、その射撃訓練中に交わされた弓神(浅野忠信)と羽生(神木隆之介)の何気ない会話が、全て今回のストーリーの伏線になってるんですよね。
ムダな描写が一切無く、全てのシーンに意味がある『刑事ゆがみ』クオリティー。だから一瞬たりとも見逃せない。もし視聴率が芳しくないのなら、原因はそこに在るかも知れません。いかに「ながら見」の視聴者が多いかって事です。
今回は殺人未遂の真犯人が容疑者の幼い孫娘だった!という意表を突いた展開でしたが、ゲストの顔ぶれを見て予想しちゃった方も多かったのでは?
何しろ孫娘を演じたのが、2017年のNHK大河ドラマと朝ドラの両方でヒロイン(幼少期)を演じた、チョー売れっ子の新井美羽ちゃん。何かあるだろうって思いますよね。
さらに辻萬長さん、新田真剣佑くん、MEGUMIさん、そして美人すぎる現役タクシードライバーの生田佳那さんと、相変わらずゲストが多彩かつ豪華。生田さんなんてたった1シーンの出番で、若社長=真剣佑くんのお抱え運転手の役でしたw
最近になって芸名に新田という名字が追加された真剣佑くんは、千葉真一さんのご子息だったんですね。つい最近まで知りませんでした。いかに私がイケメンに興味無いかですよねw(『仰げば尊し』『僕たちがやりました』等に出ておられました)
それはともかく、今回は話がウェットになり過ぎたきらいはあるけど、法に触れなければ何をやってもいいと思ってる真剣佑くんを、バレなければ何をやってもいいと思ってる弓神刑事が破滅に追い込むラストがサイコーでしたw
私はそんな「こいつだけは絶対に怒らせちゃいけない」刑事が一番好きなんですw ダーティハリーしかり、リーサル・ウェポンしかり、スコッチ刑事しかり。日本の刑事ドラマで久々に登場した本物の「あぶない刑事」ですよねw
ただありきたりな謎解き刑事を浅野忠信さんに演じさせるんじゃなくて、浅野さんならではの危ないキャラクターを生み出した企画の勝利。原作があるとは思えない位のハマりっぷりです。
その相棒に神木隆之介くん、上司に稲森いずみさんというキャスティングも完璧で、なぜか言葉を発しない(たぶん発することが出来ない)ハッカー役の山本美月さんも女優として一皮剥けたように見えます。この4人の活躍に徹底して絞った作劇も見事ですよね。
それに加えて毎回の豪華ゲスト。私は完全にハマりました。
☆最終回
最終2話は、これまで少しずつ伏線が張られて来た弓神(浅野忠信)とひずみ(山本美月)の関係、ひずみから記憶と言葉を奪った過去の事件、その真犯人(オダギリジョー)との対決が描かれました。
謎解きだけで終わらせず、誰かを守る為なら手段を選ばない弓神のダーティーさ、底抜けの優しさが事件の核になっており、最後まで「キャラクタードラマ」であり続けた作劇が本当に素晴らしいと思いました。
弓神のみならず、彼に影響されて立派なダーティーコップに成長したチェリート羽生(神木隆之介)、そんな二人を厳しく叱咤しながらフォローする菅能係長(稲森いずみ)等もすこぶる魅力的に描かれ、ずっと浸っていたくなる心地好い世界観を築いてくれました。
そしてオダギリジョーはじめゲスト出演者もやたら豪華。毎回そうだったけど最終2話は特にそうで、他殺死体の第一発見者兼「犯人を見た家政婦」に二階堂ふみ、鑑識課員に真野恵里菜、うそ発見器のオペレーターに中村静香、さらに酒井美紀、仁科亜季子ら豪華女優陣がチョイ役で次々と登場する贅沢さ。
二階堂さんや真野さんのクレジットは「友情出演」、つまりほとんどノーギャラだった筈で、もちろん実際に友情もありつつ、ギャラ無しでも出たいと思わせる魅力が『刑事ゆがみ』という作品にはあったって事でしょう。
こういう玄人好みの番組は得てして視聴率には恵まれないけど、それでも映画化された『鈴木先生』の例もあるし、犯人のオダギリくんは逃走したままですから、映画かシーズン2か、少なくともスペシャルドラマは創られるだろうと思います。
その時、制服巡査に降格させられた弓神がどうやって捜査に加わるのか、悪くなった羽生は果たしてチェリートを卒業出来るのか、そしてどんなゲストが登場してくれるか、今からとても楽しみです。
☆補足の追記
「チェリート」というのは同シーズンにテレビ朝日系列で放映された深夜ドラマ『オトナ高校』において、三浦春馬くんが演じた主人公のあだ名。「エリートのチェリーボーイ」を略した造語です。
放映当時、私は超「おバカ」ドラマである『オトナ高校』にもハマってて、フジテレビの番組である『刑事ゆがみ』で浅野忠信さんが(おそらくアドリブで)ネタにされたのには驚くと同時に、とても嬉しかった思い出があります。
そのあと『オトナ高校』でもお返しに『刑事ゆがみ』ネタをやってましたw 同じ局の番組ならともかく、他局で放映中の番組をネタにするのは純粋なファン表明、言わばラブコールですから、見てて微笑ましいし、どちらも自分がハマってる作品なので誇らしくもありました。
だけど両番組とも視聴率は芳しくなく、2019年現在のところ続編や劇場版の制作には至らずじまい。作品の質と視聴率が比例しない現実にもすっかり慣れてしまい、もはや驚きもしません。
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