前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

何故、私はULTRAVOXを神の如く愛するのか?~『RETURN TO EDEN』~

2011-05-10 21:19:34 | ULTRAVOX
ULTRAVOX『RETURN TO EDEN』ライブCD&DVDの続きです。

日本でのULTRAVOXの紹介のされ方は、
80年代初頭のエレクトロニック・ロック、テクノ・ポップ等の台頭や
洋楽ブームの中のから出てきた(若干マイナーな)一バンド、といったところだと思います。
(むしろ「そんなバンド全く知りません」という方の方が多いかな)

事実、私が知ったのもそんな感じです。
サントリーウィスキーのCMに使われた曲(New Europeans)を聴いたのがきっかけです。
(三宅一生がヘリコプターに乗ったカッコいいCMでした)
ただ、自分にとっては、そのような"括り"には留まりませんでした。


ULTRAVOXの歴史は大きく3期に分けられます。

第1期:ジョン・フォックス(John Foxx)がフロントを務めた期間
第2期:ミッジ・ユーロ(Midge Ure)がフロントを務めた期間
第3期:一部メンバーが脱退した以降

私にとっては第2期、その中でも3枚のアルバム

『VIENNA』(1980年)
『RAGE IN EDEN』(1981年)
『QUARTET』(1982年)

を出した約2年間が全てです。
その期間こそが私にとってのULTRAVOXです。


『VIENNA』は全英チャート2位となるヒットとなりました。
シンセサイザーを多用した作品でありながら"抒情的"と評されたのは
アルバムタイトル曲「Vienna」の美しい旋律と幻想的なPV
キーボード奏者ビリー・カーリー(Billy Currie)が奏でるヴァイオリン!
そして『VIENNA』というタイトルからくるイメージが大きいと思います。


今回の再結成によるライブツアー名『RETURN TO EDEN』は
第2期の2ndアルバム『RAGE IN EDEN』(邦題:エデンの嵐/1981年)
の曲を中心に構成されたからだと思われますが
一般的な知名度の高い『VIENNA』からの曲もかなり演奏されています。
どの曲も原曲に近い(というか殆どそのまま)アレンジです。

ライブのオープニングは、その『VIENNA』に収録されている「Astradyne」という
7分近くあるインストゥルメンタルです。

金属的なパルス音が続く中、ピアノの音を模した即興的な旋律が重なり
バスドラムの鼓動をきっかけにシンセサイザーの旋律が溢れ出てきます。
そしてビリーがエレクトリック・ヴァイオリンを手にした時の大歓声。
黒のスーツでスモークとバックライトの中、ヴァイオリンを弾く姿のなんというカッコよさ!




若かりし頃好きだったバンドが時を経て再結成することはよくありますが
どなたも皆「今聴いてもカッコいい!」と思うでしょう。
(自分が好きなものが一番カッコいいのは当然のことです)

でも、それとは全く違うのです。このライブ映像を観て感じました。
「今でも」ではなく「今こそ、最高なのだ!!」


ULTRAVOXとはおよそ30年前に出会い、そしてそれは
自分にとって「カッコいいこと」「美しいこと」の基準になりました。
その後、音楽に限らず美術や映画、舞台など様々なものと出会い
その幾つかは新たに自分の「カッコいいリスト」「美しいリスト」に加わりました。
でもその道は、ULTRAVOXから連綿と続いていたのです。

まだ中学生だったあの頃、私は30年後のこの「カッコよさ」を観ていたのだ。
遥か30年先の姿を幻視し憧れていたのだ。
私はようやく、真にULTRAVOXを感じることができる年齢になったのだ。


"今の時代でも十分通用する"だとか
"時代が追いついた"などという陳腐な言い方はしたくはありません。

演奏者の年齢も、聴き手の年齢も、今が最も相応しい。
正に「大人の音楽」。そう思えてなりません。


The feeling has gone only you and I.
It means nothing to me.
This means nothing to me.
Oh Vienna.


でも、30年前からULTRAVOXが私にとって"神"である理由は別にあります。
果たして言葉にできるかどうか・・・。

穂村弘 『短歌ください』 (メディアファクトリー)

2011-05-02 00:08:21 | 
穂村弘さんの『短歌ください』を読みました。

先日下北沢にライブを観に行った時、
時間があったのでヴィレッジヴァンガードを物色していて出会いました。

本の情報誌『ダ・ヴィンチ』の読者投稿コーナー「短歌下さい」の作品をまとめたもので、
穂村さんの解説、批評が添えられています。


一般読者の作った短歌ですがびっくりしました。どれもみな素晴らしい作品です。
私は短歌や詩、小説はもちろん、絵でも音楽でも、
なにかを「創造する」ということが出来ない人間なので、
この煌めくような言葉のセンス、感性には嫉妬すら感じます。

例えばこんなもの。

 ○こんにちは私の名前は噛ませ犬 愛読書の名は『空気』です。
  (女性・18歳)
 ○石川がクラス名簿のトップですあから始まらない朝もある
  (男性・27歳)
 ○今顔が新種の猫になっててもいいや歩道の白だけ歩く
  (女性・26歳)


これも好きです。

 ○コンビニで聞こえた遅刻の言い訳が「尾崎にバイクを盗まれました」
  (男・25歳)

尾崎豊の名曲『15の夜』の一節、「盗んだバイクで走り出す」の"本歌取り"です。

年齢的には"尾崎世代"の私ですが、正直、当時から全く引っかかりませんでした。
むしろ、「盗まれたバイク」の持ち主に感情移入する方でしたので。
だからこの作品、笑いとともにその頃の感情が胸に迫ってきます。



先日読んだ、穂村弘さんの『世界音痴』の中に、
面白い映画を見たときほど「早く終わらないかなと思う」、と書かれていました。

 一刻もはやく「面白い映画を観終わった後の自分」になって、安心したいのだ。

私もこれと同じような気持ちになることがあります。
何かに激しく感動した時、早くそのことを誰かに話したい、早く自分の世界に行きたい
(だから早く終わってほしい)
と思ってしまうのです。

そんな感覚に近いのかもしれません。次の一首。

 ○こんなにもしあわせすぎる一日は早く終わって思い出になれ
  (女性・19歳)

クラシック音楽の場合、逆に「いつまでもこの時間(演奏)が続いてほしい」
と感じることもごく稀にありますが・・・。


言葉を吟味して、あれこれ単語を足し引きして作られたものもあるとは思いますが、
多くの歌は、まるでその言葉がふっと湧いて出てきた、天から降ってきた、みたいな
閃きのようなものを感じさせます。
若い方の作品が多いですけど、本当に驚かされます。

 ○「髪切った?」じゃなく「髪切ったんだね」と自信をもって言えばいいのに
  (男性・19歳)
 ○来年はコスプレだねって話したら白セーラーは遺影の沈黙
  (女性・18歳)


穂村さんは、これらの歌について、
どこが優れているのか、その面白さ、恐ろしさ、違和感、意外性を、
あるいは同じ音(おん)の繰り返しや、リズム感、押韻等の技術的な点など
的確に論評されており、「さすがはプロだなあ」と感じます。


 ○「大丈夫、お前はやれる」拒否された10円玉をきつくねじ込む
  (男性・36歳)
 ○一秒でもいいから早く帰ってきて ふえるわかめがすごいことなの
  (男性・35歳) 
 ○「罪」という鞄を持ったたくさんの男の人が揺れている朝
  (女性・27歳)

最後の歌は「TUMI」というブランド名を「罪」に見立てた歌です。



私はこのロゴを見るたびに、映画「ターミネーター」を思い出してしまうのですが、
「"罪"を持った人たち」という連想はなかったです。

同じ世界の観方、感じ方、受け取り方の多様さ、齟齬、断絶、誤解、意思疎通の難しさ
そして、それが故の面白さを改めて意識します。



"不穏な空気"や"恐ろしさ"を感じさせる歌について、穂村さんは「怖い歌は全ていい歌だ」
と書かれています。

それは、画家・中村宏さんの言葉

 「事件性がないとほとんど描く気がしない。いわゆる「癒し」の絵など私には描けません」

と呼応する、芸術における"真理"だと思います。

LIVE HOUSE 下北沢屋根裏 『IntRock Party vol.2』

2011-05-01 01:22:27 | クラシック以外の音楽
LIVE HOUSE 下北沢屋根裏に行ってきました。

出演バンドは以下の通りです。

1.the droogies
2.羅刹ガットウィズム
3.TEXAS STYLE
4.THE VALVES
5.PUNCH-LINE




ライブハウスに行ったのは数年ぶりのことです。
以前は下北沢のライブハウス、
Club251、Club Que、SHELTERなどにはよく行きましたが、屋根裏は初めてです。

他に比べても一際小さいですね。
ベースやドラムの爆音がジーンズの裾を震わす感じ、懐かしいです。


自分の年齢の1/2からせいぜい3/4位の方ばかりですし、
すでに前列でこぶしを振り上げるだけの体力もありませんので、
後方で静かに聴いていました。

どのバンドも結構うまかったですね。
以前ライブに行っていたころは、聴くに堪えないようなのもありましたけど。


the droogiesは爆音に負けず、ボーカルの太い声がよく響いていました。

TEXAS STYLEは、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの影響があるのかと・・・。
シンディー(だったと思う)とか名前が歌詞に出てきたり、あと曲の展開とか。
ミッシェルの「bowling machine'」のような始まり方の曲もあったりして。
(違ってたらすみません)

一番よかったのは羅刹ガットウィズムです。
ラッツ&スターの「め組のひと」のカバーから、という意表を突いた始まり。
ファンクっぽいリズムの曲があったり、いろんな要素が入っていて飽きさせません。
無料サンプルCDをありがたく貰って帰りました。


3時間以上立ちっぱなしだったので、腰が・・・。
今、少々耳が遠いです。