ジッとしている
路傍に咲く雑草花
何処に行けず
此の地に生き
毎年花を咲かせる
余は流転の暮らし
花を咲かせることもない
在宅を訪れると
91歳の美紗緒婆さんは
歩行器につかまり自宅の庭位なら歩けのに
太陽を浴びることもなく
一日中
炬燵のなかに潜りジッとしている
用足しには3、4回トイレに行くが
そのときは歩かず
這うか躄(いざ)りで
蟹のように移動している
何もせずに
掘り炬燵に足を垂らし
ジッと坐ったまま
何もするわけではない
ジッとしている
首を垂れたまま
眠っているのか
起きているのか
わからない
楽しいのであろうか
毎日同じことの繰り返し
或る特別養護老人ホームを訪れた
全ての特別養護老人ホームや老人保健施設がそうだとは言わないが
介護施設で過ごす多くの老人は
テーブルの前に置かれ
車いすに座りジッとしている
両隣や向かい側にも
車いすや椅子に座ったままの老人がいる
お互い言葉を交わすこともなく
此処でも
眠っているのか
起きているのか
わからない
定時のおむつ交換か
食事の時間まで
ジッとしている
ジッとしたまま
老いを過ごすのは
辛く悲しい
でも
住み慣れた家で
ジッとしているのと
介護施設で
ジッとしているのとでは
ジッとしている意味は違うような気がする
それは風景の違い
そのことは次回に述べていきたい