老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

788;白い一日

2018-06-27 19:54:00 | 歌は世につれ・・・・
真っ白な陶磁器

白い一日  小椋佳作詞/井上陽水作曲

真っ白な陶磁器を眺めては飽きもせず
かといって触れもせず
そんなふうに君の周りで
僕の一日が過ぎてゆく

目の前の紙屑は古臭い手紙だし 
自分でも可笑しいし 
破り捨てて寝転がれば
僕の一日が過ぎてゆく

ある日踏み切りの向こうに君がいて 
通り過ぎる汽車を待つ
遮断機が上がり振りむいた君は 
もう大人の顔をしてるだろう

この腕を差し伸べてその肩を抱きしめて
ありふれた幸せに
落ち込めればいいのだけれど
今日も一日が過ぎてゆく


詩(うた)の意味を
深く考えるというよりも
その切ないメロデイに流され
楽しむ
一日の流れを
白い色で表現する
何もせずに一日が過ぎてゆく
出だしの真っ白な陶磁器
それは
真っ白な湯飲み茶碗(カップ)かもしれない
真っ白な色
何色にも染められていない
純粋無垢な君
白い陶磁器は
君なのかもしれない
飽きもせずに
君を眺めているだけで
今ならば
何だかストーカーと誤解されてしまう

目の前の紙屑は
書き損じた恋文なのか
今どきは
恋文より
ラインで
気持ちを
打ち明けるから
長い一日にならずに済む

遮断機が降り
通り過ぎる汽車を待つ
時間が流れ過ぎてゆき
君を
幸せにすることもできず
想いだけが通り過ぎてゆく

本当に昔のうたである

真っ白な陶磁器を手にし
ゆっくりと
眺めていたい
真っ白な花瓶に
一輪の花を挿し
眺めているのも
いいかもしれない

渡辺淳一の小説だったか
癌で亡くなった妻の遺灰の一部を
白い花瓶を陶芸家に依頼し作った
その花瓶を部屋に飾った
それは妻からの遺言でもあった





786;埋葬

2018-06-27 04:32:39 | 老いの光影 第2章

埋葬

外陰癌を患い
痛みがあっても
一つ泣き言や愚痴をこぼさず
最期まで生きた
83歳の女性
安らかな死に顔に
合掌した
何度も白髪を撫で返した

義父の従弟にあたり
身内として
担当ケアマネジャーとして
いや
人として
葬儀に参列した
九年前に
お袋の遺骨を抱いた
それ以来
彼女の遺骨を抱いた
ぬくもりが伝わった

白い陶磁器の骨壺に
白骨になった亡骸を納める
もう今は亡き
あなたを想う
弟と妹が眠る墓の隣に
土を掘り
あなたをそっと置き
土に返した
六月二十五日は
忘れられない日になった