老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

”在宅で生活するのは難しいのでは・・・" ➌ ~家で暮らしたい~

2020-09-12 04:03:32 | 老いの光影 第6章 「老い」と「生い」

                雨に濡れ色濃く咲く露草

1672 ”在宅で生活するのは難しいのでは・・・" ➌ ~家で暮らしたい~

春男さん(70歳)は、肺癌であることは理解されているが、
癌の症状が予想以上に進んでいることについての認識は甘かった。
ステージ4の段階にあり、彼自身が癌をどう受けとめているかは、知ることはできずにいた。

東京の下町で定年近くまで働き、定年後に生まれ故郷に帰ってきた。
アパート住まいで独身生活を通してきた。
2階建ての家に憧れ、ひとりで住むにはもったいないくらいであったが2階造りの家を建てた。
映画を見るとか、お茶を飲むとか、旅行に行くとか、そんなふうなことをしたことはなく、
年に2,3回、知人と川釣りに出かけるのと盆正月に実家に帰るくらいであった(実家は甥夫婦が継いでいた)。

担当医からは「覚悟してください」、と言われたが、
いま症状は小康状態にあっても、急激に悪化し命が短くなることもあるかもしれない、という意味なのか。
”命ある間に何をしたいのか” ”やりたいことはなにか” と彼に尋ねてみたくなるが、言えずに抑えてしまっている自分。

「痛み」に打たれ弱いのは彼ばかりではなく、一般的には女性に比べ男性は痛みに打たれ弱い生き物なのであろうか・・・・。
ときどき様子を見にきてくれる実姉やヘルパーに対し
彼から「あれが食べたい、これが食べたい」、と話す人ではないので
「食べたい物」を聞き出したり、果実や饅頭が好物なので、買ってきてあげ食べさせて頂きたい、とお願いをした。

残された晩年、残された時間、春男さんの楽しみは何か、何がしたいのか、
自分が建てた家でどう過ごしていきたいのか。
(この問いかけは彼に対してだけではなく、自分自身への問いかけでもある)
癌も進行し痛みも増し拡がっていく。
自宅と病院の間を往復することも増えてくる。

9月15日に退院し、自宅での生活が始まる・・・・。




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2 コメント

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Unknown (倉庫番)
2020-09-12 08:50:12
おはようございます(@^▽^@)。いつもブログを見て頂いて、ありがとうございます。
春男さんの体調はいかがですか?これから自宅療養になるとの事ですが、大変かと思いますが、生活も特別にしないといけませんが、後々悔いは残るかも知れませんが、普段通りの生活環境をすることが、みんなが楽ではないかと思いますが、実際やってみたら、中々そうは行かないんですけどねぇ。でも、春男さんが素晴らしい一日を送れるように、頑張って下さい。
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Unknown (星光輝)
2020-09-12 16:11:08
こちらこそコメントありがとうございます。
体の動きは波があり、立ち上がりが「できたり」「できなかったり」します。
普段通りの生活や使い慣れたものを変えていくと
かえってうまくいかないときもありますよね。

一番は本人に聞きながらやっていくしかないです。

入退院の繰り返しになるかと思います。
少しでも自分が建てた家で過ごせるよう
いろんな人の力を借りながら進めていきたいと思います
今後ともよろしくお願いいたします
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