1809 静かな木
古びれた寺の境内は、森閑と人の気配もなか薄暗い
大きな欅に夕映えが射しかけていた
五年前に妻を急病で喪った孫左衛門は、いま隠居の身であり老いを迎えた。
妻を失ってから、孫左衛門は殊更、老いを感じた。
目の前に立ちはだかる欅は老木であった。
幹は根本の近くで大人が三人も手をつなぐほどの大木であった。
大木の樹皮は無数の鱗(うろこ)のように
半ば剥がれて垂れ下がっていた
そして、太い枝の一本は、枯死している。
老いた欅は、自分の姿のようでもある、と彼は深く感じた。
老いた欅は、桜咲く春を迎え
桜散る頃には老木の欅は 青葉となり風が通り抜けていった。
※ 一部 藤沢周平 静かな木 から文章を引用しました
古びれた寺の境内は、森閑と人の気配もなか薄暗い
大きな欅に夕映えが射しかけていた
五年前に妻を急病で喪った孫左衛門は、いま隠居の身であり老いを迎えた。
妻を失ってから、孫左衛門は殊更、老いを感じた。
目の前に立ちはだかる欅は老木であった。
幹は根本の近くで大人が三人も手をつなぐほどの大木であった。
大木の樹皮は無数の鱗(うろこ)のように
半ば剥がれて垂れ下がっていた
そして、太い枝の一本は、枯死している。
老いた欅は、自分の姿のようでもある、と彼は深く感じた。
老いた欅は、桜咲く春を迎え
桜散る頃には老木の欅は 青葉となり風が通り抜けていった。
※ 一部 藤沢周平 静かな木 から文章を引用しました
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