『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 1133

　『海から獲れる食材はいろいろと種類が多い、これを味わうのが楽しみですな』
　『そうですな、海に感謝感謝ですな』
　『テムノス殿、私は、浜頭に相談と教えていただきたい用件を携えて来ています。明朝、その件について話したいと考えています。その機会をよろしく願います』
　『その件承知した。朝食のあとにやろう。くつろいでやるのか、はたまた、身構えてやるのか？』
　『くつろいでやります。今夕はたっぷりと夕食を楽しませていただきます』
　『おう、夕食を楽しんでくれ！そのための夕食会だ。それ故に全員参加でやっている。相談事の件だが、俺で解ることなら相談にのる。承知した』
　『ありがとうございます。先ほどお渡しした物のうちに私らのところで焼いたスペッシャルパンがあります。今宵のうちに食べていただければ、旨いのですがーーー』
　『お～っ！そうか。あのパンか解った』
　テムノスは傍らに座している身内の者に、そのことを告げる。
　『頃合いを見て一同に頂き物のパンを配ってくれ』
　『解りました』
　タイミングを見てパンが配られる、受け取った者らが待ちかねていたようにパンを口に運ぶ、パンの旨さに顔がほころぶ、胃に落とし込んでいく。
　テムノスも手にしたパンを口に運ぶ。
　『おう、イリオネス殿、旨いっ！あの時とは、チョッピリ、味が変わったようだな。風味、風合い、口当たり、味はいけるな！』
　『誉められるとは嬉しいですな』
　『旨いパンを馳走になった。ありがとう。おう、スダヌス、お前、キドニアで毎日、このパンを口にしているのか、幸せ者だな、この野郎！杯を持て、酒を注ぐ』
　スダヌスは砂地に突き刺して立てている酒杯を手に持って差し出す、酒が注がれる。
　スダヌスがテムノスから酒ツボを受けとる。
　『テムノス殿、注ぎます、どうぞ！』
　『おうっ！』と答えて、手にしている杯をつき出す、スダヌスがテムノスの杯に酒を満たす。
　イリオネスの杯、オキテスの杯にも酒を注ぐ。
　『乾杯！』と声をあげる、杯を合わせて口に運んだ。
　夕食会が続く、一同が楽しんでいる、話を絡ませる、解きほぐす、うなずき合う。
　持論を崩さない、話がとまる、酒を飲み交わす、笑いで終える。
　夕食会は終わる時に到っていた。
　テムノスが立ちあがる一同に声をかける。
　『一同！夕食を楽しんだか？』
　『オウッ！』
　歓声があがる。
　『杯を持てっ！杯の酒を飲み乾せ！万歳の声をあげろ！』
　一同が杯の酒を飲み乾す、大声をあげる。
　『ワオッ！ワオッ！万歳っ！』
　テムノスが口を開く。
　『いいぞ！隣の者と握手を交わせ！夕食会を終える！』
　集っている者ら全員が歓声をあげる、場に集った者らが握手を交わして夕食会が終わった。
　潮騒が聞こえてくる、夕食会の島の焚火が消えていく、ざわめきが途絶える、夜空の星が光を振りかけていた。