『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1147

2017-10-24 07:18:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 マリアへの営業航海に就航している試作戦闘艇は、艇首甲板があり、続いて、座席が構成されている。最前列の席は漕ぎ座ではなく艇に座乗する者の座席となっている。左右両舷に2座が配されている。次の座からが漕ぎ座となっている。舷に沿って片厳12座、両舷合わせて24座が艇尾に向かって配されている。そして、艇尾に舵座が設けてあるといった構造である。
 イリオネスとテムノスが座しているのは最前列左舷の座である。
 オキテスがイリオネスに声をかける。
 『軍団長、イラクリオンの係留の浜へは、スダヌス浜頭の操舵によって着港させることになっています。イラクリオンの浜が指呼の前方に見えてきています』
 『おう、考えていた着港時間より、早い到着だ』
 『着港後はゴッカスの指示により、艇の点検整備作業となります』と伝えて、ゴッカスに作業の件を指示する。
 座を立って、艇尾に向かうゴッカス、スダヌスと着港について打ち合わせる。
 『おう、ゴッカス、帆張りはもう下ろしていいだろう』
 ゴッカスが指示を発する。
 『全帆をおろせ!漕ぎかた、漕ぎ開始!』
 スダヌスは慎重舵操作で浜の係留位置に艇を就ける。後続のヘルメス艇もギアスが慣れた要領で係留位置に就けた。
 イラクリオンの浜の東部、この一帯はエドモン浜頭が仕切っている浜である。その一画に2艇は無事に着いた。
 一行は、艇を下りる、浜に揚がる、一同は無事の着港を喜び合った。
 ギアスとゴッカスが顔を合わせる。
 『おうっ!ゴッカス、いい天気、いい風に恵まれた航海であったな。それにしても考えていた航走時間がかからなかった。イラクリオンについたのが早かったな。日没くらいかなと思っていた』
 『そうだな、太陽がまだこの高さにある。スダヌス浜頭にそのあたりのことを聞いてみようではないか』
 二人はスダヌス浜頭の傍らによる、問いかける。
 『スダヌス浜頭、艇の船足が速く、予定航走時間をかけずに到着したのでは?』
 『おう、そうだな、櫂を使うことなく、いい風に押されて艇がよく走ってくれた。そのおかげだな。いい走りでイラクリオンについた。速かったな。この時間でこれだけの行程を航走したのは俺も初めてだ』
 『そうですか、時間はどれくらいかかっていますか?』
 『通常であれば、レテムノンからイラクリオンまでは、三刻と四半刻といったところだが、この行程を二刻と半刻くらいで走破したように思う。ギアス、お前のヘルメスも速かった。先行している俺らの艇によくついて走ってきた!重畳重畳!』
 三人は、手を握り合って、この航路行程を速い船足で乗りきったことを喜び合った。