『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1141

2017-10-16 07:01:07 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 風に押されて順調に航走を続ける二艇、艇上は出航のあわただしさから落ち着いてきていた。
 イリオネスとオキテスは、これからを打ち合わせている、操船を担当しているゴッカスは、風向きと風力に神経をとがらせている、ギアスは、ヘルメスの速度制御に気を配っている。
 テムノスがスダヌスに、突如マリア往きを決めた経緯について語っている。イリオネスがイラクリオンのエドモン浜頭を訪ねると聞いてのことである。
 そのことをイリオネスには伝えてはいないテムノスである。彼はその意中をスダヌスに話した。
 『それなら俺も一肌ぬいでやろうか』と心に決めたことを話した。
 エドモン浜頭とテムノスの二人は、マリアの集散所においては相談役的なポジションの人物なのである。
 スダヌスは、テムノスとイリオネスの親密度の急激な深まりに驚いている。急遽、マリア往きを決めたテムノスの心を動かしたイリオネスを見直していた。
 レテムノンの港を出航して一刻を経ずしてパノルモスの沖に到る。レテムノンから、やや北東に進路をとっていた二艇は、パノルモスの沖に到って進行方向を東に向けて転進して波を割り進んだ。
 艇上の者らは昼めし時を過ごしている、艇上の者の中には目にする沿岸の風景を初めて目にする者がいる、景色を眺めて話を弾ませる、彼らは船旅を楽しんでいた。
 テムノスはスダヌスに声をかける。
 『なあ~スダヌス、艇尾の舵座にいって、ちょっとばかり時間をかけて、舵の操作をやってみないか』
 『浜頭、いいですね!やりましょう。オキテスに言って話をつけてきます』
 スダヌスがオキテスに声をかける、声が風としぶきに飛ぶ、大声をあげる。
 『おう、オキテス、テムノス浜頭と俺だが、舵の操作をやりたい。浜頭と話して、イラクリオンの港まで案内役の俺が操舵する。いいな!』
 『いいです。了解しました』
 オキテスが直ちに措置する、艇尾の舵座に三人がつく、テムノスが舵の操舵棒を握る。
 『テムノス浜頭殿、時間がたっぷりあります。新舵構造を心ゆくまで試してください』
 『オキテス隊長、この新しい舵だが、櫂舵と比べて、きれ具合がいい!操舵したときの船尾の触れ具合がいい』
 『そうですか』
 『このきれ方が、櫂舵とは違うのだな。船尾が触れる、船首が向かう方向の波を割る。これがいい、感動ものだ』
 『ありがとうございます』
 スダヌスが話しかける。
 『オキテス、お前らここまでよく考えて、この艇を造った。感心感心というところだ』
 新構造の舵、2本の帆柱、4枚帆、試作戦闘艇について談論が風発した。