『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1135

2017-10-07 08:20:41 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おはようございます。イリオネス殿、おいでですか?』
 『はい、私がイリオネスですが』
 『テムノスが屋敷のほうへ来ていただくようにと言っています。案内します。それから、水夫頭が浜小屋のほうにいます。いつでも来てくださいとのことです』
 『ありがとうございます。水夫頭殿の浜小屋はどちらでしょうか?』
 『あ~あ、浜小屋はあそこです』と手を伸ばして指し示した。
 『解りました』
 イリオネスは、オキテスを伴ってテムノスの屋敷へと向かう。ギアスら三人は浜小屋のほうへと歩を向けて歩み出す。
 浜小屋の戸口に三人が並んで立つ、ギアスが声をかける。
 『水夫頭殿はおいでですか?』
 『おうっ!来られたか、待っていました。この時期だ、陽が高くなると陽射しが熱い、中に入られよ』
 三人は小屋中へ招じられる、浜小屋の中を浜風が通り抜けていっている、快い。
 『多忙なところをお邪魔します』
 『おう、どうぞ!新艇の使い具合がどうかって?造船事業をやっている方から、そのように尋ねられるのは初めてだな。なかなかやるじゃないか』
 彼は三人の顔を見つめる。
 『私は、テムノス浜頭殿のもとで水夫連を取り締まっている、テルバスです』
 『申し遅れました。私はヘルメス艇のキャップのギアスです』
 『私は試作艇のゴッカスです』
 『おう、この前、新艇納入の折に顔を見たな、久しい顔だ。元気であったか?』
 『はい、元気です』
 『私はクレタ語の語訳を務めるクリテスといいます。よろしく願います』
 ギアスが持参した堅パンの箱をテルバスに手渡す。
 『これは私らのところで焼いている堅パンです。テルバス殿と皆さんで笑味してください』
 『おう、ありがとう。君らが気にかけている聞きたいこと、何でも聞いてくれ』
 『ありがとうございます』
 テルバスの言葉を受けて、ギアスは、気軽く丁寧に聞きたいことを尋ね始める。
 新艇の船体の長さ、船幅、船体の深さ、漕ぎ座の具合、櫂の水掻き効果、そして、帆張り操作、風はらみ等いろいろと尋ねる。また、風の強さ、風はらみに関連しての艇の走り具合、艇の安定走行性等詳しく尋ねた。
 テルバスはそれらについて端的に要領よく評価しながら答える。彼の評価は、想っていたより良い評価をしてくれている。改良点の指摘についても私見を述べる。その発想については、ギアスらとは基準点に差異があるが、それはやむを得ないところと理解して聞き止めた。クリテスは、聞き取った重要点を木板に書き留めている。
 『テルバス殿、最後にお尋ねするのですが、櫂舵の操舵具合はいかがですか?』とギアスが尋ねた。