『おはようございます。イリオネス殿、おいでですか?』
『はい、私がイリオネスですが』
『テムノスが屋敷のほうへ来ていただくようにと言っています。案内します。それから、水夫頭が浜小屋のほうにいます。いつでも来てくださいとのことです』
『ありがとうございます。水夫頭殿の浜小屋はどちらでしょうか?』
『あ~あ、浜小屋はあそこです』と手を伸ばして指し示した。
『解りました』
イリオネスは、オキテスを伴ってテムノスの屋敷へと向かう。ギアスら三人は浜小屋のほうへと歩を向けて歩み出す。
浜小屋の戸口に三人が並んで立つ、ギアスが声をかける。
『水夫頭殿はおいでですか?』
『おうっ!来られたか、待っていました。この時期だ、陽が高くなると陽射しが熱い、中に入られよ』
三人は小屋中へ招じられる、浜小屋の中を浜風が通り抜けていっている、快い。
『多忙なところをお邪魔します』
『おう、どうぞ!新艇の使い具合がどうかって?造船事業をやっている方から、そのように尋ねられるのは初めてだな。なかなかやるじゃないか』
彼は三人の顔を見つめる。
『私は、テムノス浜頭殿のもとで水夫連を取り締まっている、テルバスです』
『申し遅れました。私はヘルメス艇のキャップのギアスです』
『私は試作艇のゴッカスです』
『おう、この前、新艇納入の折に顔を見たな、久しい顔だ。元気であったか?』
『はい、元気です』
『私はクレタ語の語訳を務めるクリテスといいます。よろしく願います』
ギアスが持参した堅パンの箱をテルバスに手渡す。
『これは私らのところで焼いている堅パンです。テルバス殿と皆さんで笑味してください』
『おう、ありがとう。君らが気にかけている聞きたいこと、何でも聞いてくれ』
『ありがとうございます』
テルバスの言葉を受けて、ギアスは、気軽く丁寧に聞きたいことを尋ね始める。
新艇の船体の長さ、船幅、船体の深さ、漕ぎ座の具合、櫂の水掻き効果、そして、帆張り操作、風はらみ等いろいろと尋ねる。また、風の強さ、風はらみに関連しての艇の走り具合、艇の安定走行性等詳しく尋ねた。
テルバスはそれらについて端的に要領よく評価しながら答える。彼の評価は、想っていたより良い評価をしてくれている。改良点の指摘についても私見を述べる。その発想については、ギアスらとは基準点に差異があるが、それはやむを得ないところと理解して聞き止めた。クリテスは、聞き取った重要点を木板に書き留めている。
『テルバス殿、最後にお尋ねするのですが、櫂舵の操舵具合はいかがですか?』とギアスが尋ねた。
『はい、私がイリオネスですが』
『テムノスが屋敷のほうへ来ていただくようにと言っています。案内します。それから、水夫頭が浜小屋のほうにいます。いつでも来てくださいとのことです』
『ありがとうございます。水夫頭殿の浜小屋はどちらでしょうか?』
『あ~あ、浜小屋はあそこです』と手を伸ばして指し示した。
『解りました』
イリオネスは、オキテスを伴ってテムノスの屋敷へと向かう。ギアスら三人は浜小屋のほうへと歩を向けて歩み出す。
浜小屋の戸口に三人が並んで立つ、ギアスが声をかける。
『水夫頭殿はおいでですか?』
『おうっ!来られたか、待っていました。この時期だ、陽が高くなると陽射しが熱い、中に入られよ』
三人は小屋中へ招じられる、浜小屋の中を浜風が通り抜けていっている、快い。
『多忙なところをお邪魔します』
『おう、どうぞ!新艇の使い具合がどうかって?造船事業をやっている方から、そのように尋ねられるのは初めてだな。なかなかやるじゃないか』
彼は三人の顔を見つめる。
『私は、テムノス浜頭殿のもとで水夫連を取り締まっている、テルバスです』
『申し遅れました。私はヘルメス艇のキャップのギアスです』
『私は試作艇のゴッカスです』
『おう、この前、新艇納入の折に顔を見たな、久しい顔だ。元気であったか?』
『はい、元気です』
『私はクレタ語の語訳を務めるクリテスといいます。よろしく願います』
ギアスが持参した堅パンの箱をテルバスに手渡す。
『これは私らのところで焼いている堅パンです。テルバス殿と皆さんで笑味してください』
『おう、ありがとう。君らが気にかけている聞きたいこと、何でも聞いてくれ』
『ありがとうございます』
テルバスの言葉を受けて、ギアスは、気軽く丁寧に聞きたいことを尋ね始める。
新艇の船体の長さ、船幅、船体の深さ、漕ぎ座の具合、櫂の水掻き効果、そして、帆張り操作、風はらみ等いろいろと尋ねる。また、風の強さ、風はらみに関連しての艇の走り具合、艇の安定走行性等詳しく尋ねた。
テルバスはそれらについて端的に要領よく評価しながら答える。彼の評価は、想っていたより良い評価をしてくれている。改良点の指摘についても私見を述べる。その発想については、ギアスらとは基準点に差異があるが、それはやむを得ないところと理解して聞き止めた。クリテスは、聞き取った重要点を木板に書き留めている。
『テルバス殿、最後にお尋ねするのですが、櫂舵の操舵具合はいかがですか?』とギアスが尋ねた。
