『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1140

2017-10-13 09:34:26 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『出航準備ができているわけだな』
 『はい、そうです。万端、整っています。出せ!と言われたらすぐ出れます』
 『解った。待機してくれ』
 オキテスがイリオネス、スダヌス、二人のところに戻る。
 『軍団長、出航準備、完了しています』
 『そうか、了解した。テムノス殿の到着を待つ』
 イリオネスは、スダヌスのほうに体を向ける。
 『テムノス殿がエドモン浜頭殿に会いたいそうだ。二人の間柄は昵懇であるらしい』
 『それは言えてる!お前と話し合って急にマリア往きを決めるとはな。話がどのように展開したか解りかねるが、いい傾向であることは間違いない。大歓迎だ』
 スダヌスが声をあげる。
 『おい、イリオネス、テムノス殿が見えたぞ!』
 三人がテムノスを迎える。
 『おう!スダヌスおはよう』
 『おはようございます。昨夕は馳走になりました。イリオネスから話を聞きました。喜んで同道いたします』
 『テムノス殿、出航の準備万端、整っています。艇へ案内いたします』
 『おう、ありがとう』と言って、同道してきた水夫頭のテルバスのほうに体を向ける、二言三言打ち合わせる。
 『テルバス、では、行ってくる。あの件、頼んだぞ!お前に任せる』
 『解りました。帰りはいつでしょう?』
 テムノスがちらりとイリオネスと目を合わせる。
 『三、四日で用事が終わる』
 『はい、解りました。道中のご無事をーー。行ってきてください』テルバスが応じる。
 『テムノス殿、よろしいですか?艇のほうへ案内いたします』
 『イリオネス殿、勝手を言って世話をかけるのう』
 『いえ、そのようなことはありません。私のほうこそです』
 四人は、出航を待つ二艇のいる浜に向けて歩き始める。
 『おう、スダヌス、イリオネス殿と話していてな、エドモン浜頭のことが話に出てな、急にマリア往きを決めた。二人、いや、お前を加えて三人でイリオネスの仕事を応援するカタチになると思う。やってやろうじゃないか』
 『解りました。なんでも指示してください』
 二艇が係留している浜に着く、四人が試作戦闘艇に乗艇する。
 オキテスが空を見あげる、陽の光が熱射を射かけてくる、彼は出航の令を下した。
 二艇が浜を離れる、波を割る、沖に出る、全帆を帆張る。
 海上に吹きわる風は、力のある西風である。
 二艇は、順風を帆にはらむ、イラクリオンの浜を目指して快走した。